ジェームズ・ボンドが選ぶにはワケがある! アストンマーティンの最新DB12【試乗記】
2023年5月、アストンマーティンの創業110周年、「DB」シリーズの誕生75周年という記念すべきタイミングでニューモデル「DB12」が発表された。DB11の後継モデルであり、同社における新世代スポーツカーの第1弾と位置づけられる。クーペとオープンモデルであるヴォランテの両方に試乗した。 【詳細写真】アストンマーティンの最新DB12
アストンマーティンと聞くと、映画『007』シリーズの主人公ジェームズ・ボンドの愛車を思い出す人も多いだろう。シリーズ3作目の『ゴールドフィンガー』にボンドカーとして登場したアストンマーティンDB5は、その後の一連の007シリーズ作のなかでボンドのプライベートカーとしてもたびたび登場している。 実はこの「DB」とは、第二次世界大戦後にアストンマーティンを自らの企業グループの傘下におさめたイギリス人実業家・デイヴィッド・ブラウンのイニシャルである。ハンティングをたしなみ、サラブレッドを所有し、パイロットの資格を有し、ナイトの称号を得た、ジェントルマンであったという。しかし、1970年代にデイヴィッド・ブラウンは経営難に陥る。アストンマーティン・ラゴンダ社を手放すことになり、新オーナーのもと一度はDBの名は消滅することになる。 しかし、1990年代にフォードが同社を傘下に収めると、デイヴィッド・ブラウンを新生アストンマーティンの役員として招聘し、「DB」の名が復活する。以降、ブラウンの没後もハイパフォーマンスバージョンの「DBS」やSUVの「DBX」など派生モデルも誕生しながらDBの名は連綿と受け継がれているというわけだ。 「DB12」のボディサイズは全長4725mm、全幅1980mm、全高1295mm、ホイールベース2805mm。基本骨格にはアストンマーティンが得意とする最新世代のアルミ押し出し材を接着したVHプラットフォームを採用する。 エクステリアデザインは、先代のDB11に比べてエンジン出力の向上に伴い、よりフロントグリルを拡大し開口部を大きくとっている。スタイリングとしては抑揚の効いた大胆なものながら、大げさなフロントスポイラーやリアウイングなど、エアロパーツ類を備えないアンダーステイトメントさが、まさに英国車の雰囲気。アストンマーティンはこのDB12を、グランドツアラーを超えた“スーパーツアラー”と標榜している。 パワーユニットは、最高出力680PS/最大トルク800Nmを発揮する4リッターV8ツインターボエンジンをフロントミッドに搭載。これは従来同様にメルセデスAMG製ユニットをベースに独自のチューニングを施したもの。組み合わせる8速ATはリアアクスル側に配置するトランスアクスル方式を採用する。