「幻のメロン」次世代に 栽培難しい島根県オリジナル品種ゴールデンパール 生産者の渡部さん高校生に伝授
「幻のメロン」とも呼ばれる島根県オリジナル品種「ゴールデンパール」の生産を松江市で続ける渡部旭さん(44)が、松江農林高(松江市)の生徒に栽培方法や関連商品の開発を教える活動に取り組んでいる。栽培が難しく生産者が増えにくい中、将来の担い手を育てて県の特産品にしたいと考える。 県農業技術センターが1960年ごろに開発した。果汁が多く、あっさりした味わいが特長だ。渡部さんは種苗店を経営していた20年前に出合った。口にした瞬間に「これほど香り高いメロンがあるのか」と驚いたという。 2014年に県が発足した、生産者を育成する3年間のプロジェクトに参加。7人でスタートしたが、病気に弱く天候の影響を受けやすいため、利益が伸びにくい課題があった。プロジェクト終了後に残ったメンバーは渡部さん1人だった。 もともと生産者は県内に数人だけ。「こんなに良いメロンを絶やしたくない」と栽培を続けた。食べ頃の短さを考え、店頭に並べる一般流通をやめて個人向けの受注販売に限るなど、利益を出す工夫をした。 その中で、松江農林高が、授業の一環で22年からゴールデンパールの栽培を始めた。栽培に苦労する学校側から相談を受け、「次世代に受け継いでいけるなら」と同年から指導を始めた。 本年度は2、3年生8人が取り組んだ。糖度が販売条件に届かなかったが、生徒のアイデアを生かして凍らせた果肉を使ったフラッペを開発した。今月上旬に松江市内のスイーツイベントで販売し、ほぼ完売した。 グループのリーダーの3年西村香音(かのん)さん(17)は「自分たちが育てたメロンの商品を手に取ってもらえてうれしい」とほほ笑む。渡部さんは「頼もしい存在。どんな形でもゴールデンパールにつながりを持つ子が増えてくれれば」と目を細めた。
中国新聞社