金正恩総書記の長年の夢「二つの国家体制」…永久分断の扉開くか
「共和国憲法」に「大韓民国を徹底した敵対国家として規制(規定)」したという「労働新聞」の17日付報道は、南北関係を同じ民族ではなく「国家関係」に分離・確立しようとする金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記兼国務委員長の「長年の夢」が制度化の段階に至ったことを意味する。金正恩総書記は、「国家関係」の改憲を担当する最高人民会議初日の7日、「金正恩国防総合大学」を訪れ、「以前は、私たちが南の解放を掲げ、武力統一という言葉も使っていたが、今は全く関心がなく、二つの国を宣言してからはなおさらその国(韓国)を意識することもない」と述べたが、これは口先だけのことではない。 金総書記は2012年に政権を握って以来、これまで南北関係を「国家関係」に切り替えるため、着実に取り組んできた。 最初の試みは光復70周年の2015年8月15日、北朝鮮の標準時間を30分遅らせた「平壌(ピョンヤン)時間」の制定発表だ。分断以来、常に同じだった南と北の「時間」を分けることで、朝鮮半島8000万市民と人民の日常を軍事境界線を境に南北に切り離すと言う意味が込められた措置だ。「平壌時間」は2018年4月の板門店南北首脳会談を機に取り消しになったが、今回「大韓民国=徹底した敵対国家」を憲法に明記したことを機に復元される可能性も排除できない。 2番目の試みは2017年11月「我が国家第一主義」の登場だ。これは金正日総書記の「わが民族第一主義」の「民族」を「国家」に置き換えたもの。「我が国家第一主義」は「人民大衆第一主義」、「自強主義」と共に金総書記の「3大統治理念」の一つだ。「わが国家第一主義」の宣言後、北朝鮮は主な党・国家行事で労働党旗より「共和国旗」を重要な象徴として掲げ、「愛国」を強調してきた。 3番目の試みは2021年1月、労働党第8回大会を機に、これまで「赤化統一路線」または「南朝鮮革命論」と呼ばれてきた「民族解放民主主義革命」という言葉を党規約から削除したことだ。これをめぐり、北朝鮮が「朝鮮は一つだ」という旗印の下、韓国を「革命の対象」と考えてきた伝統から脱却を目指しているという分析が多かった。「もう南の解放・武力統一には全く関心がない」という金総書記の7日の発言はこれを念頭に置いたものだ。 金総書記はこのような長年の地ならし作業を経て、2023年12月末の労働党中央委第8期第9回全員会議と、2024年1月の最高人民会議第14期第10回会議で、「北南関係は最も敵対的な二つの国家関係」とし、「憲法の『自主、平和統一、民族大団結』表現の削除」と「民族歴史から『統一』、『和解』、『同族』概念の完全な除去」を提案した。そして7~8日に開かれた最高人民会議はこれを新憲法に反映した。 ただし、「最も敵対的な二つの国家関係」を目指す金総書記の新路線は、以前の「国家関係」の確立の試みと同じようで異なる。南北が「最も敵対的な」関係にあると規定したことが決定的な違いだ。以前の「平壌時間、我が国家第一主義」と「民族解放民主主義革命」の削除措置は「敵対」を前面に出さず、「分離」に焦点が合わされていたためだ。南北の「永久分断」を目指すことでは連続的といえるが、関係の性格を「最も敵対的」と規定した点では、断絶的でもある。 韓国に対する恨みがあまりにも深く、同じ天の下にはいられないという意味の「不倶戴天の敵」とけなす状況に至った現実は、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権発足以後、南北が互いを「主敵」とし、対立し軋轢する関係の変化と無関係ではないとみられる。南北関係に長く関わってきた元高官は「まずは敵対性を緩和することで絡まった糸を解いていかなければならない」と述べた。 イ・ジェフン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )