「表彰式で会いましょう」武豊が果たした“イチローとの約束”…ドウデュース“王者の末脚”をどう引き出したのか?「いい流れではなかったが…」
「並の馬じゃ持たない。本当にすごい馬」
「(勝ったかどうかは)最後までわからなかったです。並の馬じゃ持たない展開だったのに、最後まで押さえ込んだ。乗ってて本当にすごい馬だと思いました」 武の度胸と馬への信頼が、上がり3ハロン32秒7という驚異的な末脚を引き出した。 3、4コーナーで1、2番手にいた馬たちが2着となる流れで勝ち切ったのだから、ドウデュースは本当に強い。直線だけで前をごぼう抜きにした前走の破壊力も凄まじかったが、早めに動いて他馬をねじ伏せた今回は、そこに王者の風格が加わった感がある。 武が主戦をつとめたディープインパクトの最終世代の産駒で、英愛ダービーなどを制したオーギュストロダンは8着だった。ディープの産駒を、そのライバルだったハーツクライの産駒で迎え撃ったことに関して問われると、武はこう答えた。 「そこに特別な思いはないですけど、競馬の面白いところかなと思います。世界を代表する馬たちがこうしてジャパンカップに来てくれて一緒に戦えたことはすごく嬉しかったですし、そこで勝てたことはさらに価値があるのかなと思います」 イクイノックスが勝った昨年、ジャパンカップは、IFHA(国際競馬統括機関連盟)が発表した2023年の世界のGIトップ100で「2023年ロンジンワールドベストレース」を受賞し、世界一に認定された。 「今後も世界をリードするレースになってくれると嬉しいです」 そう語る武にとって、ジャパンカップ優勝は2016年キタサンブラック以来8年ぶりで、歴代単独トップの5勝目となった。 また、天皇賞・秋、ジャパンカップと連勝したドウデュースは、次走に予定される有馬記念を勝てば、2000年テイエムオペラオー、2004年ゼンノロブロイにつづく史上3頭目の「秋古馬三冠制覇」となる。 「無事なら次走は有馬記念で、そこで引退ということになると思うので、何とかいい最後を飾りたいです」
「表彰式で会いましょう」レジェンド同士の約束
表彰式で、武が、プレゼンターをつとめた元メジャーリーガーのイチロー氏とハグをすると、場内が大きく沸いた。 「先日イチローさんとお会いする機会があって、ジャパンカップのアンバサダーをやってくださるということで、ぜひ表彰式で会いましょうとお話ししたんです。『約束が守れてよかったです』と言いました」 共同会見でそう言って笑顔を見せた武とイチロー氏との付き合いは長い。初対面は1995年のラジオ番組。2004年に武が2年連続年間200勝突破を達成して自身の年間最多勝記録を更新したとき、その年メジャーリーグでシーズン最多安打記録を更新したイチロー氏から電話があり、「すごいですね」と言われたという。武は恐縮して、「いや、あなたに言われたくないです」と思ったと笑う。 イチロー氏の恩師の故・仰木彬氏と、武の父の故・武邦彦氏も親しかったという。 競馬界と野球界を代表するレジェンドには、そうした深い結びつきがあったのだ。 世界のトップホースによる戦いといい、2人のレジェンドの競演といい、実にいいものを見せてもらった。
(「沸騰! 日本サラブ列島」島田明宏 = 文)
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