ベルギー代表クルトワは「絶対に先読みしない」異次元GK 6年前の悪夢「ロストフの14秒」も演出
【サイズを最大限に生かしている】 南氏は、さらにクルトワのプレーの特長について詳しく解説してくれた。 「細かいところになりますが、クルトワの特長のひとつとして、シュートに対して絶対に先読みしないことも挙げておきたいですね。 サイズがあるからこそとも言えますが、シュートに対して自分が先に動くことがなく、シュートコースと逆に倒れるようなシーンはほとんど見ません。シュートシーンで必ず最後まで我慢できるというのも、相手にゴールを決めるのを難しくさせているポイントになっていると思います。 また、1対1のシーンなどで相手に寄せるスピードもあります。しかも、直線的に相手に寄せるだけでなく、わざと横に膨らむように動きながら相手に寄せるテクニックを見せることがある。要するに、わざとシュートコースを空けながら寄せて、相手にそのコースにシュートを打たせ、それをストップするという高度なテクニックです。 そしてもうひとつ加えたい特長が、手でボールを弾くのが抜群にうまいということ。掌の硬い部分で強く正確に弾くことで、こぼれ球のシュートを打たれないようにしています。 だから、シュートストップをしたあとのセカンドボールで、ゴールが生まれるシーンはほとんどありません。もちろん、手が長い分、指先ではなく掌の硬い部分を使えることが大きいとは思いますが、それも含めて、自分のサイズを最大限に生かしていると言えるでしょう。 とにかく、クルトワほど相手にシュートコースを与えないGKは存在しないと言っても過言ではないと思います」 現在、ベルギー代表を率いるドメニコ・テデスコ監督との確執により、代表でのプレーを見ることはできない。だが、負傷から復帰すれば、クルトワが再びレアル・マドリードで異次元のシュートストップを披露することは間違いないだろう。 南氏の解説を頭に入れて、あらためてクルトワのプレーに注目したい。 (第3回につづく) 【profile】南雄太(みなみ・ゆうた)1979年9月30日生まれ、東京都杉並区出身。静岡学園時代に高校選手権で優勝し、1998年に柏レイソルへ加入。柏の守護神として長年ゴールを守り続け、2010年以降はロアッソ熊本→横浜FC→大宮アルディージャと渡り歩いて2023年に現役を引退。1997年と1999年のワールドユースに出場し、2001年にはA代表にも選出。現在は解説業のかたわら、横浜FCのサッカースクールや流通経済大柏高、FCグラシオン東葛でGKコーチを務めている。ポジション=GK。身長185cm。
中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi