安達祐実の演技が光る!ドラマ「3000万」は目が離せないクライムサスペンス
土曜の夜、NHKで放送されているドラマ『3000万』。ジャンルで言うとクライムサスペンスなのですが、先が読めなくて毎回主人公に感情移入してドキドキしてしまいます。 独自視点のTV番組評とオリジナルイラストが人気のコラムニスト・吉田潮さんに、その見どころポイントをうかがいました。
3000万という大金が人を変える
3000万円という大金がある日突然舞い込んできたら……? しかもその金の出どころは、誰かが起こした強盗事件である。黙っていれば、まんまと手に入る可能性がある。でも、罪の意識と良心の呵責もある。犯人たちが奪い返しにくる危険もある。そんな災厄が降りかかった夫婦を描く『3000万』(NHK)。一見、地味な犯罪モノだが、選択肢を間違っていく夫婦の心理描写が面白くて、目が離せなくなっている。
札束のニオイを嗅ぐ夫婦、似た者同士と思いきや…
主人公は派遣社員として働く佐々木祐子(安達祐実)。元ミュージシャンで現在は警備員の夫・義光(青木崇高)と、息子の純一(味元耀大)と暮らしている。夫が音楽で成功すると信じ、ローンを組んで家を買った途端、ある事件でその道を絶たれた過去がある。純一にはピアノの才能があり、存分に伸ばしてあげたいが、壊れて「ソ」の音が出なくなった電子ピアノを買い替える余裕もない。派遣先のカスタマーセンターでは客に怒鳴られ、陰険な上司・初山(持田将史)にはイヤミを浴びせられても、心を無にして耐えるしかない。頑張っても時給UPはたった10円のみ。10円……たった10円である。 そんなとき、幸運が、いや災厄が飛び込んでくる。祐子が運転していた車にバイクがぶつかってきたのだ。転倒した若い女を助けようとするも、逆に突き飛ばされて、後部座席に純一を乗せたままの車を奪われてしまう。結局、車は事故を起こして、犯人の女は意識不明の重体に。純一は無事だったが……女が所持していたバッグをとっさに持って帰ってきてしまう。その中身が3000万。札束30個分、3000万円である。 罪の意識に苛まれる純一の様子がおかしいと気づいた祐子は、純一が隠していた3000万を発見。警察に事情を話して、返そうと話し合う夫婦。義光の友人の父・奥島(野添義弘)が地元警察の刑事で、懇意にしているため、彼に事情を話そうとする。純一をかばうために嘘をつく算段だったが、義光はとどまってしまう。金を返さなかった義光を責めるも、祐子は祐子で3000万円の誘惑には抗えず。正しいことをしようと口にはするものの、ふたりともどこかで逡巡がある。こっそり札束のニオイを嗅いだりしてね、似た者夫婦でもあるのだ。息子を守るためについた嘘だったが、うしろめたさと罪悪感が徐々に薄れ、逆に開き直っていくふたり。