ベルリン映画祭出品作、太田達成の「石がある」に金子由里奈・三宅唱らがコメント
第73回ベルリン国際映画祭フォーラム部門に正式出品された太田達成の監督作「石がある」。映画監督の金子由里奈、三宅唱ら同作を鑑賞した著名人からコメントが到着した。 【動画はこちら】のびやか、おおらか、丹念な映画「石がある」予告編 同作は、知らない街にやってきた女性が河原で水切り遊びをしている男性と出会い、たわいのない時間を過ごしながら、いつしか上流へと歩いていく物語。小川あん、加納土らが出演した。 金子は「川べりに座ってただ水を見ることに意味を見出さないためにこの映画を見るのかもしれません」とコメントを寄せた。三宅は「のびやかに、おおらかに、もちろん丹念に……そんな気風のいい映画の作り方をしたいと夢見ていたら、なんと出会ってしまった」とつづっている。 9月6日の公開初日より上映館で販売されるパンフレットには、小川と加納が5つの質問に答えるアンケートや、編集を手がけた大川景子のエッセイ、太田と文筆家の五所純子が数日間にわたって交わしたメールを紹介する「往復書簡」、映像作家の佐々木友輔が寄稿した作品評、詩人・絵本作家のジョージ・ネルソンによるイラストとエッセイ、音楽家・玉置周啓(MIZ / MONO NO AWARE)のエッセイ、詩人の蜂飼耳による詩が掲載される。価格は税込1000円。表紙の装丁を含むデザインは福西想人が担当した。 「石がある」は東京・ヒューマントラストシネマ渋谷、ポレポレ東中野ほか全国で順次公開。 ■ 石岡丈昇(社会学者)コメント 「石がある」は、「世界」を撮った作品だ。 人間が世界を解釈するのでない。世界がまず存在していること。世界が、人間や犬や川を包みこむ時間が流れる。 人間が「いる」のではなく、世界が「ある」。 「いる」から「ある」へのシフト。石がある。 風があり、水があり、砂がある。 「ある」ものたちの連鎖がカメラワークを通じて撮られていく。チャコがかわいい。 ■ 金子由里奈(映画監督)コメント 川べりに座ってただ水を見ることに意味を見出さないためにこの映画を見るのかもしれません ■ ダヴィデ・カザーロ(MUBI Notebook)コメント 「石がある」は私たちを幼い頃の川辺へと連れ戻す。どんな夢も叶い、限りない日々を過ごせたあの頃へと。 そしてこの映画は私たちに未来も見せてくれる──最良の物語の数々がそうであるように。 優しさや希望、自然や仲間たちと出会う瞬間を求める私たちの未来を。 ■ 蜂飼耳(詩人)コメント おだやかな秋の河原で、たまたま出会った二人が、なんとなく一緒に過ごす。 水の流れは、時の流れ。 うっかり、川の中へ放ってしまった石。どの石も、この世にたった一つだ。 じわりと滲む寂しさと、距離感の優しさに、映画という方法の妙味を感じました。 ■ 藤原麻里菜(無駄づくり)コメント 映画を倍速で見る人も多いみたいだけれど、それで節約された時間は何に使うのだろう。 河原で石を拾って、投げて、凪のような時の流れを、生産性のない行動を贅沢だと感じず人生を送っていきたい。 ■ 三宅唱(映画監督)コメント のびやかに、おおらかに、もちろん丹念に…… そんな気風のいい映画の作り方をしたいと夢見ていたら、なんと出会ってしまった。 この映画との出会いを大切にしたいと思う。 出会いの場面に本当に驚いたあと、その後の場面はどれも自然と胸に染み入った。 (c)inasato