戦力外の元広島の四番・小早川毅彦がヤクルトで球史に残る開幕戦3連発!【逆転野球人生】
すると、東京ドームの超満員の観客は平成球史に残る衝撃のシーンを目撃することになる。2回の第1打席、初球のストレートをセンターバックスクリーンに叩き込む移籍第1号アーチ。続く4回の第二打席は外角のカーブをとらえライトスタンドへ。野村監督の「斎藤はワンスリーになると、決まってヒュッとカーブを投げてきよる」という試合前のアドバイス通り、1ストライク3ボール(当時の表記)のカウントからカーブを狙い打ちした。仕上げは6回の第3打席、今度は内角低めのシンカーをすく上げ、またもライトスタンドへ突き刺した。前年わずか1安打のリストラ選手が、昨季のヤクルトが0勝6敗と苦しんだ“平成の大エース”から、劇的な3打席連続アーチを放ってみせたのである。 なお、天敵をKOして開幕戦に勝利した97年のヤクルトは独走でセ・リーグを制し、日本一にも輝くが、そのすべては開幕戦の小早川の3連発から始まった。35歳のリストラ男が、野村再生工場で蘇りチームの救世主へ。開幕2戦目は力みまくって4打席4三振はご愛嬌、優勝を決めた阪神戦では猛打賞を記録するなど、打率.249、12本塁打という数字以上の強烈なインパクトを残した背番号7。野村監督も「今年のワシの守り神やったな」と最大限の賛辞を送っている。 「あの3発や。負け犬根性も、斎藤への苦手意識も見事に払拭してくれた。小早川の3本がすべてや」 文=中溝康隆 写真=BBM
週刊ベースボール