田中将大 メジャー仕様に進化させた魔球
メジャーに詳しい評論家の元中日、与田剛さんは、こんな風に見ている。 「推測ですが、親指の位置や、ボールの縫い目のかけ方などをいろいろと工夫してピタリと合う位置をみつけたのでしょう。とにかくコントロールが素晴らしかった。元々、フルカウントからも崩れない制球力と安定力がマー君の特徴でしたが、それがメジャーの環境の中でもしっかりと出せるようになってきた。1、2試合投げた中で、対応、修正をしたのでしょう。107球で8イニングを投げるリズムは、チームメイトの信頼にも変わります。それと、今日は、もうひとつスプリットを生かす配球が絶妙でした」 与田さんは、これまでに比べてインコースが使えるようになった配球に目をつけた。 「インコースを使えるようになっていました。ホームベースを左右に広く使い、スプリットを真ん中に落とす。打者はインコースを意識させられるので真ん中のボールには手を出します。それが落ちるんですから三振は増えますね。外に甘めのボールもありましたが、インコースを攻められ、踏み込みができなくなっているので、そのボールをミートすることができないんですよ」 メジャーのストライクゾーンを把握した上で、インサイドのボールが使えだしたことも、メジャー仕様に変えたスプリットが生き始めた理由なのだろう。 この日は、異例の雨天中止からのスライド登板だった。しかも、ダブルヘッダーのデイゲイムという慌しさで、ニューヨークは、早朝から氷点下に冷え込んだ。前日の雨で、シートを被せていたけれど、そのシートの上の水が凍って、グラウンドキーパーは、朝からまず、その氷を叩き割る作業を始めなければならなかった。気温は4度。「指の掛かり具合とか、微妙に影響するかもしれないが、彼は日本でも寒いところで投げてきたから大丈夫だろう」と、試合前にヤンキースのジラルディ監督は語っていたが、そういう環境の変化にも動じなかった。