“文字起こしネタバレサイト”で逮捕者…「タダ見」したユーザーが”無関係”とはいえない違法コンテンツの根深い問題【弁護士解説】
コンテンツ産業に充満する危機感
今回の件に対し、KADOKAWAが表明したコメントには止むことのない違法コンテンツアップロードへの怒りと併せ、業界の一員としての危機感もにじんでいる。 <本件のように適法な引用の範囲を超えて映像作品を文字で書き起こし公開することは、正規版の消費、利用に伴うクリエイターに対する適切な対価還元を阻害し、将来の作品創作環境を悪化させることにつながることから看過することはできません。 今後も不正な行為を行う者から、利用者がコンテンツから享受する楽しみ、およびクリエイターをはじめとする権利者の経済的利益を守るとともに、国際的に評価の高い日本のコンテンツを創出する環境や産業としての競争力を維持・強化し、文化の普及と発展に持続的に貢献してまいります。>(KADOKAWA公式サイトより) 膨大な資金と労力をかけたコンテンツを無断で利用され、不当に利益を吸いあげられ、オリジナル作品を視聴する閲覧者の楽しみまで収奪している。違法であることが「悪」なのは当然として、それに伴い、コンテンツ産業の環境悪化をもたらしていることがなによりの問題なのだ。
“タダ見”に罰則はないが、しっぺ返しはある
前原弁護士が補足する。 「昨今、コンテンツ産業とりわけ出版社などは厳しい環境にあります。そこへ違法ダウンロードによって、本来得るべき利益を奪われるとなれば、死活問題にもなりかねません。違法ダウンロードに対し、厳格な姿勢を打ち出し続けることが抑止力につながることは間違いありません。 一方でサーバーを海外に設置されている場合にはやはり、訴訟を起こすにしても、一筋縄ではいかない側面があることは否めません。 また、罰則が行為の悪質さに比べ、軽いことも気になるところではあります」 違法なコンテンツに対し、大きな需要があることも問題だ。本来は、コンテンツに対する対価を支払って閲覧するべきところを、ネット上では簡単に違法コンテンツにアクセスし、”無料視聴”できてしまう。動画コンテンツの場合は、基本、ストリーミングなら、「セーフ」ともいわれている。 「繰り返しになりますが、ネット上に違法なコンテンツが掲載されるのは、それが収益につながるからです。その意味では、そうしたコンテンツに広告を掲載する代理店やプラットフォーム等も審査を厳格にしていかなければ、今後も違法コンテンツは掲載され続けるでしょう。 また、閲覧者も基本、ダウンロードしなければ罰則はないと気軽に”タダ見”するのではなく、違法コンテンツの視聴が、コンテンツ産業を弱体化させ、ひいては良質なコンテンツを生み出す環境が先細りしていき、自分に跳ね返ってくるということに危機感を持ってほしいと思います」(前原弁護士)
弁護士JP編集部