まるでワイキキ!大地震から7ヵ月…町民総出で復活させた能登の夏「澄んだ青空と白浜」超絶景写真
〈1月に発生した「能登半島地震」。いまだにその爪痕が残る中、被災地の人々のたゆまぬ努力により、かつての美しさを取り戻しつつある地域も出てきた。現地で取材活動を行うフォトジャーナリスト・幸多潤平氏の写真とともに、最新の「能登の夏」を追った〉 【画像】か、完全に透明だ…! 「ワイキキビーチみたい」と海水浴客が熱狂する能登屈指の遠浅ビーチ 元旦に発生した能登半島地震から7ヵ月が過ぎた。輪島、能登、珠洲などの被災地の復興は思うように進んでいない。だが、地元町民たちの表情は明るかった。 夏になると毎年、家族連れで賑わう海水浴場がある。石川県七尾市能登島にある八ヶ崎海水浴場だ。海水浴場自体の規模は小さい。それでも人気なのは海水の透明度が高く、白砂が美しい遠浅のビーチがまるで「ワイキキビーチみたい!」と家族連れに好評だからだ。 ビーチのほかに岩場もあり、海中にはさまざまな生き物がいて、子供は大喜び。そしてビーチの周囲には澄んだ青空と、のどかな緑の田園風景が広がっている。これがとにかく、落ち着くのだ。 しかもこの海水浴場、地元の町会の方々が運営しているというから驚かされる。自らも被災者であり、仮設住宅での生活を余儀なくされている方もいる中で、町民たちが総出で海水浴場を一日も早く復活させようと盛り上げているのだ。 海水浴場内はゴミや流木などもキレイに片付けられていて、とても被災地とは思えないほどの美しさ。町民には若者よりも年配の方が多い。その労力と費やした時間を思うと頭が下がる。一人でも多く海水浴場へ来てほしい、楽しんでほしいという願いがヒシヒシと伝わってくる。 海水浴場近くの駐車場に車を入れると、駐車場係の男性が駐車料金800円を受け取りに来た。運転席の窓を開けると、男性は笑顔でこう言った。 「よくぞ来てくださいました。復興に向けて励みになります」 大地震と津波で、能登では多くの家屋が甚大な被害を受けた。八ヶ崎海岸の「海の家」も2mの津波にのみこまれて大破。復旧のメドはたっていない。それでも、町民たちはテントで「仮設・海の家」を作り、カップ麺やアメリカンドッグ、たい焼きなどの販売を再開させた。 そこに小学生の男の子がやってきて、アメリカンドッグを買い求めた。満面の笑みで迎えた売店の女性がその子に「何でもいいから、おばちゃんたちに応援メッセージを書いてくれると嬉しいな」と言いながら、メモ用紙を差し出した。 すると男の子はメモ用紙には何も書かずに大きな声でこう言うと、恥ずかしそうに家族のもとへ走って行った。 「僕、ここの海が好きだからまた来るよ!」 テントの中で、売店の女性は静かに涙ぐんでいた。 駐車場係、売店店員に加え、ビーチの平穏を守る監視番も町民が担当する。私が訪ねた日は年配の女性が監視番だったのだが、歳を感じさせないフットワークの軽さに圧倒された。 ビーチではできるだけ多くのお客さんと会話をし、何度も海に入って浮遊物やゴミを回収する。遠方まで泳いでいる海水浴客には「風向きによっては、アッという間に浮き輪ごと沖に流されるよ」としっかりクギを刺す。 ジッとしているだけで熱中症になりそうな猛暑日だったが、その女性は海水浴場をくまなく動き回り、客の心配ばかりしていた。その姿に胸が熱くなった。真心が心にしみる八ヶ崎海水浴場。励まされ、元気をもらったのはむしろ我々、海水浴客のほうであった。先の小学生ではないが、心の中で再訪を誓った。 一日も早い復興を祈りながら――。
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