利用の減少にあえぐJR西日本「越美北線」の未来 北陸新幹線「敦賀延伸」を機に利用を増やせるか
鉄道ジャーナル社の協力を得て、『鉄道ジャーナル』2024年5月号「薄氷を履む越美北線」を再構成した記事を掲載します。 【写真】美濃白鳥まで貫く計画であったが実際に工事が進められたのは九頭竜湖まで。終点の九頭竜湖駅にはログハウスふうの洒落た駅舎があるものの列車が来るのは早朝から夜までの間にたった5回だけだ ■廃止の危機感を抱き続けた沿線市町村 福井県の資料によると、越美北線の利用者数はJR発足の1987年度に年間68万3千人(1日平均約1870人)だったものが、2019年度は33万6千人(同約920人)と半減している。豪雨災害で主要区間が運休となっていた2006年度はほぼ30万人まで落ち、熱望された結果の運転再開とともにやや反転して35万人程度となったが、その後の落ち着きを見せた後は横ばいを続けていた。
元来が特定地方交通線レベルのため、沿線にはいつ廃止になるかわからないとの危機感がつねにつきまとう。だから国鉄改革当時から鉄道および乗合バスを含めて公共交通を守る活動が展開され、乗車運動や観光利用の促進が手掛けられてきた。大野市が活動の中心を担っている。 こうした状況の中で、2007年に地域公共交通の活性化及び再生に関する法律が施行され、地域の交通については各市町村も積極的に関与し、行政と事業者が連携して計画を立てて実行してゆくことが努力義務化された。
福井県では、行政と事業者が連携して再生させたえちぜん鉄道と福井鉄道の事例があり、どちらも沿線市町の人口は減っている(2008年と2018年の比較でえち鉄沿線は3%、福鉄沿線は2%の減)のに、利用者はアップ(えち鉄は16%、福鉄は27%の増)している。県と沿線市町は220億円以上の財政支援をしてきた。だが、越美北線はJRの経営で独立しているので、直接的な財政支援をしたり受けたりできる関係ではない。災害復旧に関わる支援や駅舎の取得(管理の移譲)、車両ラッピングなどは為されてきたが、いずれも側面的な支援である。そのため、自治体側からJRに対するモーションは、「要望」することが主となる。
■福井-大野間は2000年より7本減 しかし片や、全社的に厳しいエリアが多いJR西日本にとって、きわめて利用が少ない越美北線への積極投資の意志が働くかと言うと、残念ながらそうではない。2001年3月に快速をやめる減便があり、以後は小康を保っていたものの、コロナ禍に陥って二度の変化があった。 2021年3月、早朝に越前大野から九頭竜湖に送り込んでいた列車が営業列車から回送に切り替えられ、さらに10月、福井発下りと越前大野発上りの一番列車を削減、福井発下り始発が9時台、越前大野発10時台という現行ダイヤとなった。2000年当時の本数と比べると福井―越前大野間で7本、越前大野―九頭竜湖間で3本の列車が減っている。