クライアントの行動変容をもたらすコーチング・コンピテンシーとは 【原文】Coaching competencies: What works?
コーチングのコンピテンシーとは何か?
コンピテンシーを特定するために、著者らは組織における人材育成に関して4つのコーチング資格認定団体(ICF、EMCC、Association of Coaching、WBAC)が定めるコーチングのコンピテンシーをすべて精査した。これらのコンピテンシー・モデルはコーチングの専門家から幅広く集めた情報に基づいており、現役のコーチを対象にした調査によって得られた現時点の意見に照らして検証している。ボヤツィスのチームは、このアプローチを「専門家の意見」と表現している。 これらのモデルのコンピテンシーは、様々なコンピテンシー(22%)、業務(38%)、行動スタイル(27%)、価値観(15%)、知識で構成されていた。 ボヤツィスらは、補足調査として、クライアントの行動変容に影響したと考えられる他の「支援的職業」(セラピー、教育など)のコンピテンシー・モデルも調べている。 感情知性と社会的知性は、2007年にボヤツィスとゴールマンが見出した概念で、パフォーマンスを向上させる能力として広く検証されているが、これがどちらの調査でも重要なコンピテンシーとして浮上した。 感情知性は自己認識と自己管理に区分でき、社会的知性には社会認識と関係性管理が含まれる。以下に論文から引用した表1を示す。 表1. 感情知性・社会的知性のコンピテンシー (ボヤツィス・ゴールマン 2007.) 感情知性のコンピテンシー 「自己認識」クラスタは、自分の内的状態、嗜好、資質を知ることに関係している。 1.感情の自己認識:自分の感情とその影響を認識する。 「自己管理」クラスタは、自分の内的状態、衝動、資質を管理するものである。 2.感情の自制:激しい感情や衝動を抑える。 3.適応力:変化に対応する柔軟性。 4.達成志向:向上しようと努力する、または卓越した基準を満たそうとする。 5.前向きな展望:物ごとや未来の明るい面を見る。 社会的知性のコンピテンシー 「社会認識」クラスタは、人間関係にどう対処し、他者の感情、ニーズ、不安をどのように認識するかに関係している。 6.共感:他者の感情や視点を感じとり、関心を持つ。 7.組織認識:集団における感情的なネットワークや力によるネットワークを読みとる。 「関係性管理」クラスタは、他者から望ましい反応を引き出す術やその巧みさに関係している。 8.コーチとメンター:他者の能力開発のニーズを察知し、彼らの能力を伸ばす。 9.インスピレーショナル・リーダーシップ:個人やグループを鼓舞し、導く。 10.影響力:効果的な戦術を駆使して人を説得する。 11.コンフリクト管理:交渉して意見の違いを解決する。 12.チームワーク:共通の目標に向かって他者と協力する。集団の目標を達成するためにグループ内に相乗効果を生み出す。 4つのコーチ資格認定団体による主な感情知性コンピテンシーは、感情面の自己認識、達成志向、感情の自制、適応力、前向きな展望だった。主な社会的知性のコンピテンシーは、共感、インスピレーショナル・リーダーシップ、影響力、組織認識だった。達成志向と共感は、最もよく使用されているコンピテンシーだった。一部のコンピテンシーは、好奇心、パターン認識、体系的思考などの一般的な知力に関連していた。