【毎日書評】大阪生まれの在日コリアンが30歳で韓国留学して気づいた「K-POP」が人気の理由
この本の主人公となる僕自身のことを紹介しよう、名前は韓光勲(はん・かんふん)。1992年生まれの在日コリアン三世。大阪市で生まれ育った。父は韓国生まれで、23歳のとき日本に働きにやってきた。母は大阪市生まれの在日コリアン二世。家族の会話はもっぱら日本語だ。 実家は大阪市の繁華街である難波に近く、自分では「都会っ子」だと自負している。(「プロローグ」より) 『在日コリアンが韓国に留学したら』(韓 光勲 著、ワニブックスPLUS新書)の著者は、自身の出自についてこう記しています。大阪大学大学院国際公共政策研究所の修士課程修了後、毎日新聞社に入社して記者として働いたのは、国際報道をする部署に入り、ソウル市局に赴任するという夢があったからなのだそうです。 ところが激務に耐えきれず、2年半で体を壊してしまうことに。ソウルで働く夢はついえたかに思えたものの、「韓国に留学すればいいのではないか」と思い立ち、2023年から約1年間、韓国で留学生活を送ったのだそうです。ちなみにきっかけになったのは、K-POPのガールズグループ「TWICE」を知ったことだったのだとか。 出会いは2017年だった。教えてくれたのは、オランダに留学する日本人の男の子だった。彼には韓国人の彼女がいて、K-POPに詳しかった。いざ曲を聴いてみると、すぐにハマった。毎日、YouTubeで動画を見る日々が続いた。TWICEの曲から元気をもらい、留学生活をなんとか無事に終えることができた。そこで思いついた。 「韓国留学に行こう」 すぐに、僕は韓国への短期留学を決めていた。「韓国語を学びたい理由はK-POP」という、どこにでもいる大学生の典型だった。(18~19ページより) つまり本書では、30歳にして実現したソウルへの留学体験について、さまざまな思いを綴っているわけです。在日コリアンの微妙な立場についてなど、重要な問題にも触れられており、そちらもぜひ確認しておきたいところなのですが、ここでは“入り口”として第4章「音楽文化」に触れてみたいと思います。