15年前から変わらない…日本人が「社内プロジェクト」で失敗するときの「原因」【勤続46年・元ソニー社員が解説】
プロジェクトは仕事の進め方のひとつの形態
プロジェクトとは、なんでしょうか。 プロジェクトをひとことで言いあらわすと、「人類の夢」です。「音楽を外にもち出したい」「大人でもテレビゲームを楽しみたい」「大画面のテレビで映画鑑賞をしたい」「ペットのような愛犬玩具が欲しい」ソニーのエンジニアは、そのような夢を商品として開発し「WALKMAN(ウォークマン)」「PlayStation(プレイステーション)」「BRAVIA(ブラビア)」「AIBO(アイボ)」を生み出してきました。 プロジェクトとは「世の中にないものを期限内に創造する活動」です。言い換えれば、今までにやったことのないことを計画・実行し、期限までに目標を達成することです。つまり、唯一無二のものを創り出す夢のある活動であるといえます。 プロジェクトは、日本語で「計画」と訳される場合があります。「アポロ計画」は50年以上前に人類初の有人月面着陸を成功させました。アメリカ航空宇宙局(NASA)による人類初の月への有人宇宙飛行計画です。1961年から1972年にかけて実施され、有人月面着陸に全6回成功しました。アポロ計画のうちとくに月面着陸は、人類が初めて有人宇宙船により地球以外の天体に到達した事業です。宇宙開発史において画期的な出来事であっただけではなく、人類史における科学技術の偉大な業績として今もしばしば引用されます。 アポロ計画から50年、現在は「アルテミス計画」が進行中です。最初の女性月面着陸をミッションとしたプロジェクトです。「アルテミス」は「アポロ」の双子の妹で、月の女神とされています。アルテミス計画には日本も参加しており、「OMOTENASHI」は今回の打ち上げで唯一、月面着陸を目指す探査機です。 日本においては「超電導リニア中央新幹線計画」があります。最高速度500キロメートルで、東京―名古屋間を40分で結ぶ、夢の超特急の実現に向けたプロジェクトです。 一方で、MRJ(Mitsubishi Regional Jet)プロジェクトのように失敗プロジェクトもあります。「YSー11」のプロペラ機から約50年、噴射式のターボファンエンジン搭載の機体として完全な日本国産の旅客機プロジェクトがスタートしました。しかし、2019年6月13日、三菱航空機は開発中のリージョナルジェット機をMitsubishi Space Jet(三菱スペースジェット)と改称することを発表したのです。2020年5月22日、開発費の半減や量産機の生産中止など、開発計画が大幅に見直されることが報道されました。一部報道では、人員削減や量産機の製造中断、米国の開発拠点閉鎖、将来的な開発中止も視野に含めた大幅な見直しであるとされています。同年6月15日、スペースジェットの開発体制を大幅に縮小することを明らかにしました。そして、6度の納入延期を経て、2023年2月7日に開発が中止。 このようにプロジェクトという名のもとに、人類の夢をさまざまなかたちで実現してきました。規模の大小にかかわらず、今後もプロジェクトという形態の業務は増える傾向にあります。プロジェクトに関しては、アメリカのPMI(Project Management Institute:プロジェクトマネジメント協会)が発行する書籍、PMBOKⓇ ガイド『A Guide to the Project Management Body of Knowledge』(プロジェクトマネジメント知識体系ガイド)で明確に定義されています。 プロジェクトとは、「独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施される有期性のある業務」です。つまり、独自性と有期性があり、やってみないとわからないことが多いため、段階的に詳細化して進めるといった特徴があります。 独自性とは、なんらかの識別できる点で、プロダクト、サービス、所産としてユニークな成果物を創造することです。有期性とは、どのプロジェクトにも明確なはじまりと終わりがあることです。段階的詳細化とは、プロジェクトは、はじめからすべてがわかっているわけではありません。プロジェクトが進むにつれて、徐々にわかってくることがあります。その段階で詳細に計画をして進めます。 プロジェクトは仕事の進め方のひとつの形態です。対応する形態としては、定常業務があり、ルーチンワークともいいます。なんらかの製品を開発する業務がプロジェクトであり、それを量産化して販売するのは定常業務となります。 小山 透 プロジェクトマネジメント・エバンジェリスト ※本記事は『常勝! プロジェクトを成功に導くマネジメントの定石 立ちはだかる壁を乗り越えるプロジェクト成功の鍵とは』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。