過酷なダカールラリーで排気量998㏄の「水素小型エンジン」を鍛える! HySEが2025年の参戦を発表
水素小型モビリティの実現に向けた「仲間づくり」の一環として参戦
カーボンニュートラル社会の実現に向けて、カワサキモータースやスズキ、ホンダ、ヤマハ発動機、トヨタなどの組合員により、水素小型エンジンの実現と普及に向けた研究を行っている技術研究組合水素小型モビリティ・エンジン研究組合(HySE : Hydrogen Small mobility & Engine technology)が、2025年1月3日から1月17日までサウジアラビアで開催されるラリーレイド競技「ダカール2025(通称:ダカールラリー)」に出場することを発表した。 【画像】ダカールラリーに出場するオフローダー「HySE」のそのほかの画像を見る 出場クラスは、カーボンニュートラルに向けた次世代パワートレインの技術開発を目的として、2024年大会から設定された新たなクラス「Mission 1000 ACT 2」だ。ラリー期間中の走行距離は1日あたり約100kmに及び、それを10日間行うため総走行距離は約1000kkmに達する長期戦だ。 HySEが投入するマシンは、水素を燃料とする排気量998ccの水冷4ストローク直列4気筒スーパーチャージドエンジンを搭載した「HySE-X2」と呼ばれるオフロードバギー車。それを、ダカールラリーバイク部門における日本人選手の最高順位記録を保持し、四輪の市販車クラスT1での優勝経験を持つ池町佳生選手が操る。 HySEは、2024年1月に行われた前回大会に、水素小型モビリティにおける早期の課題抽出を目的として初出場。世界一過酷なモータースポーツといわれるダカールラリーにおいて、同年から新設された“Mission 1000”カテゴリーに、研究活動で用いているモーターサイクル用水素燃料エンジンを搭載した「HySE-X1」で参戦し、初参戦ながら最終日まで走り切ってクラス4位の実績を挙げている。 そして2回目となる今回は、新たな技術課題に挑戦するため、高回転域の出力特性の向上や低中回転域での燃費改善、水素タンクの増設など、HySE-X1からエンジンおよび車体をさらに進化させた「HySE-X2」が投入される。 HySEは、全世界で注目されるダカールラリーへの参加を通じ、HySEのプレゼンスや取り組みをアピールすることで、グローバルで業界の垣根を超えた水素小型モビリティの実現に向けた仲間づくりを進めていきたいと表明している。 水素小型エンジンを搭載する二輪バイクは、今年7月にカワサキが量産メーカーとして世界初の公開走行を実施したばかり。一方の四輪は、小型エンジンではないものの、日本国内で行われているスーパー耐久シリーズに、トヨタが水素エンジンを搭載したGRカローラで参戦し、24時間レースを含む耐久戦で実績を重ねている。さらに、かのル・マン24時間レースでも、水素エンジン搭載車を対象としたクラスの設立に向けた動きが活発化しており、大小の水素エンジンを開発するフィールドとして、モータースポーツがにわかに注目を集めている。 このように、ダカールラリーをはじめとした厳しい環境下で行われるモータースポーツは、極限状態での課題抽出や技術的なトライを繰り返し行うことが可能な、まさに「走る実験室」であり、水素エンジンの実用性向上、普及に貢献する。HySEのダカールラリー参戦が、今後の水素小型エンジンの実用化に向けた動きを、より加速させるものになることに期待したい。 ■水素燃料エンジン車「HySE-X2」の概要 全長×全幅×全高 :4000mm×2000mm×1900mm 車両重量:1,250kg エンジン種類/弁方式 :水冷4ストローク直列4気筒スーパーチャージドエンジン/DOHC 4バルブ 総排気量:998cc 水素タンク:70MPa×4本(2024年は3本、2025年は車体レイアウトを改良し4本に増設) 水素搭載量:7.2kg
TET 編集部