「愛子さまのティアラ新調は、次世代へ技術を伝える最後の機会」腕飾りがティアラに「ブローチ」は帯留めに…皇室の宝冠を手掛ける工房の切なる願い
歴代5人の皇后が着けてきたティアラは、天皇が代々受け継ぐ「由緒物」で、皇后に「お貸し下げ」されてきた。 皇后雅子さまが、2019年の天皇陛下の即位に伴う一連の宮殿での儀式やパレードで着用されていたのが、「皇后の第一ティアラ」だ。 明治時代にドイツの職人の手によって造られたブリリアント型の宝冠。60個のダイヤモンドがちりばめられ、トップには9つのダイヤの星飾りを戴くデザインだ。中央の星飾りのダイヤは、21カラットの大きさだという。星飾りは取り外して花簪にもなる。首飾り、純金のブレスレットとあわせて140個もの宝石が使われた豪奢な宝冠だ。 ■自然の造形美を体現した日本のティアラ 皇后のティアラが日本製になったのは、大正時代に製作された「皇后の第二ティアラ」からだ。皇室に納めたのは、宝飾大手の御木本(現・ミキモト)。 24年6月の英国訪問での晩餐会で雅子さまの頭上で輝いていた、菊をモチーフに日本の職人らしい自然の造形美が表現された宝冠だ。
また、上皇后美智子さまと雅子さまが、それぞれご結婚のときに着けていたのが「皇太子妃の第一ティアラ」。こちらもミキモトの手によるものだ。 平成に入ると、ミキモト以外の工房も製作に加わるようになった。それまで随意契約だったティアラの発注が、2003年に成年を迎えた三笠宮家の次女の瑶子さまから、和光とミキモトを中心とした指名競争入札に変わった。 和光が受注したティアラ(宝冠)と首飾りなどの宝飾品の製作を担当したのが「アトリエマイエドール」だ。同工房が初めて皇族のティアラを手掛けたのは、瑶子さまの成年のときだった。 11年には、秋篠宮家の長女、小室眞子さんのティアラも手掛けている。
ティアラを着ける場面は、皇居・宮殿での行事や両陛下主催の晩餐会など、さまざまだ。皇居だけではなく、訪問する国での歓迎晩餐会や王族の結婚式で着用することもある。 あらゆるシチュエーションでの使用を想定し、どのような髪型やシチュエーションにあっても女性皇族の頭にぴったりとはまり、疲れさせず、そして女性皇族を美しく輝かせる宝冠でなければならない。 ひとつひとつの宝石が大きく、金属部分も重厚感のある外国のティアラに比べて、日本の職人の手によるティアラは、日本の自然美を表現したような繊細なデザインと細工に定評があると、大倉さんは話す。 「欧州のティアラは、とくに横から見たときに、宝冠の土台からトップまでを直線で美しさを体現したデザインが多い。一方で、特にわれわれの工房では、宝冠の土台から上にかけて、ふんわりと弧を描くような優美さを意識して作ります」