小川眞由美の鬼気迫る役作り、映画史に残る名演技 「ニセ物じゃ感情にならない」と本物の金魚を食べる
【女優・小川眞由美 今、明かす私が歩んできた道】 1967年、小川眞由美は同じ文学座所属だった細川俊之と結婚した。「『シラノ』の恋人役で共演してそのまま結婚したのですが、続きませんでした。俳優同士、お互い嫉妬深いから。それでも子供を1人残せたのは何よりでした」 71年に文学座をやめたのは、細川の退座がきっかけだったという。「彼は、退座を決めてまるで柱を失ったかのように不安な状態でした。私が柱になってあげようと思い一緒にやめたんです。杉村春子さんはいてほしかっただろうけど、『人生いろいろあるから、何かあったら私がかばってあげるからね』と送り出してくれました」 退座後の70年代は数々の映画・ドラマで妖艶な演技で人気を集める。ヒットシリーズ「女ねずみ小僧」については「自分の地が出ていますね。やんちゃで。母の陽気さをもらっています」。 細川と離婚した73年に始まったドラマ「アイフル大作戦」では主題歌「Viva!アイフル」を歌いヒットした。歌は「あんなのやるもんじゃないと思いました。反省してます」と笑う。 83年の「積木くずし」は最終回の視聴率が45・3%を記録する歴史的なヒットに。小川は娘役の高部知子に「遠慮せずに思い切り私を蹴っ飛ばして」と要求し、体当たりの演技を見せた。ドラマの影響で小川の娘がいじめられたこともあった。「後に原作者の穂積隆信さんが謝ってこられましたが、女優として与えられた役をやるのは当たり前。あそこまで正直に家族の問題を明かした人はなかったので社会現象になりましたね」 映画でも「八つ墓村」「鬼畜」(ともに野村芳太郎監督)、「復讐するは我にあり」(今村昌平監督)と次々とヒット作に出演。「『鬼畜』は本妻役を依頼されましたが、台本を読んで妾の役をお願いしました。『復讐するは我にあり』も、最初は本妻役でしたが、毎晩お茶漬けを食べて少しふっくらして愛人役のせりふを言ったら、監督が『その役でいきましょう』と」 「思い出すのは、『食卓のない家』で精神を病んで金魚を食べるシーンです。スタッフが羊羹で作った金魚では本物の感情にならない。そこで本物を食べたんです。ガリガリと骨を噛み砕いて。スタッフが気をきかして臭みを消すためにレモン汁を入れたうがい水を用意してくれましたが、口の中は金魚の骨で血まみれでレモンがしみて痛いのなんの(笑)」