人口の東京圏一極集中は是正できるのか─大都市の人口再生産と人口分布構造
東京圏の出生数増加
では、東京圏の自然増加の拡大、とりわけ出生数の増加はどのような経緯で発生したのでしょうか。これを考えるため、コーホートに着目した分析をしてみましょう。コーホートとはある期間に出生した人口集団であり、「世代」と考えて問題ありません。例えば1931~35年コーホートとは、1931年から1935年までの5年間に出生した集団であり、1935年時点で0~4歳になる人々のことを指します。 図3は、コーホート別に各年齢時点における全国人口に占める東京圏人口の割合(コーホート・シェア)を示しています。このシェアの値は、それぞれのコーホートの人口が加齢に従って東京圏にどのような割合で居住してきたのかを表しており、その変化は人口移動の結果として解釈することができます。図2で見た高度経済成長期の転入超過の中心であったのは1930・40年代コーホートであり、図3にはそれ以降のコーホートのシェアを掲載しています。 それぞれのコーホート・シェアの変化を見てみますと、1930年代の2つのコーホートは10~14歳から30歳前後までの転入超過によってシェアが大きく上昇し、その後は定常状態になっています。 1940~60年代コーホートは、10~14歳から20~24歳にかけてシェアが大きく上昇しますが、25~29歳以降はシェアが低下します。このシェアの低下が、いわゆるUターンやIターン等の還流移動の効果ということになります。この点が1930年代コーホートと異なっていますが、20~24歳までに上昇したシェア分の人口が全てUターンしているというわけではありません。しかし、1970年代以降のコーホートでは25~29歳以降もシェアが上昇するように変化しています。 自然増加という点で注目したいのは、0~4歳シェアの変化です。1961~65年コーホート以降、明確にシェアの水準が上昇しており、25%前後に集中するようになっています。東京圏生まれである人口の割合が大きくなってきているのです。 なぜこのように1961~65年コーホート以降に0~4歳シェアが大きくなったのでしょうか。1世代30年ということで親子の年齢差を30歳として考えてみると、1961~65年コーホートの親は1931~35年コーホートになります。図3は親子関係が対応するように折れ線グラフの色とマーカーの形状を揃えていますが、1931~35年コーホートの30~34歳シェアと1961~65年コーホートの0~4歳シェアが概ね同水準であることがわかります。 つまり東京圏で生まれた1961~65年以降のコーホートとは、高度経済成長期以降に東京圏に転入したコーホートの結婚・出産という家族形成行動の結果として誕生したコーホートであり、過去の人口移動による東京圏への人口集中の影響が、出生時点での人口分布として現れるようになったコーホートであるということです。