【“マルキの闇”裁判終結へ㊤】兵庫県警機動隊員連続自殺「息子は警察に殺された」記者が追った8年半
■自殺直前、婚約者に「これからもずっと大好きやけど、マルキには耐えられん」
山本巡査には婚約者の女性がいた。 2人で撮影した写真からは、とても仲が良く幸せいっぱいの様子が伝わってくる。 結婚を目前に控え順風満帆に見えた山本巡査は、なぜ自ら死を選んだのか。 私は山本巡査の婚約者に会い、当時の状況を聞くことにした。 婚約者が山本巡査と最後に会ったのは、自殺する前日。いつもと変わらない様子で、2人でたくさん笑って過ごしたという。しかし、その翌日、山本巡査から送られてきたLINEのメッセージで状況は一変する。 「これからもずっと大好きやけど、これ以上マルキ(機動隊)には耐えられん。死にたいよ。この世からホンマに消えたいって思えるくらい辛い」 ただ事ではないと感じた婚約者はすぐに電話をかけ、数十回目でようやくつながった。 その際、山本巡査は追い詰められた様子で、こんなやり取りがあったという。
■「いまな首をつってん」
山本巡査 「いまな首をつってん。5秒くらいしたら気を失って、気づいたら床に倒れていた」 婚約者 「神様が『もうしたらあかん』って言ってるんやで。だから、もうしたらあかんよ」 山本巡査 「(ロープを)もう一回太くしたら、いけるかもしれへん」 婚約者 「絶対したらあかん。絶対連絡するから待っててな」 山本巡査 「うん、待ってる」 これが山本巡査と婚約者の最後の会話となった。その後、いくらメッセージを送っても山本巡査から返事が来ることはなかった。 山本巡査の母親や婚約者への取材を通して、私は兵庫県警の「パワハラはなかった」とする調査結果に疑念を抱き、「異例の連続自殺」の真相を解明するために取材を継続することを決めた。(つづく)【全3回のうちの第1回】 次回は、自殺した2人のうちのもう1人、木戸大地巡査(当時24)の遺族と警察組織の闘いや兵庫県警が真っ黒に塗りつぶした自殺の「真相」について詳しくお伝えします(あす17日を予定)。
■記者プロフィール
橋本雅之 2014年読売テレビ入社。記者として神戸支局、大阪府警、大阪地検特捜部などを担当。報道番組のフィールドキャスターを経て、現在NNNニューヨーク支局特派員。北米や中南米のほか、ウクライナとイスラエルの戦地を取材。アメリカ赴任後も遺族と連絡を取り合い「マルキの闇」の取材を継続。
■悩みを抱えている人へ
厚生労働省や自殺の防止活動に取り組む専門家などは、悩みを抱えていたら自分だけで悩みを解決しようとするのではなく、専門の相談員に話を聞いてもらうなどしてほしいと呼びかけています。 【こころの健康相談】 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/kokoro_dial.html 【いのちの電話】 https://www.inochinodenwa.org/