糖尿病の治療薬「SGLT2阻害薬」の作用はご存知ですか? 効果・服用時の注意点を薬剤師が解説
糖尿病以外にも効果がある? 適応に“なる人”と“ならない人”の違いとは
編集部: SGLT2阻害薬は、糖尿病以外の疾患に対しても効果が得られますか? 志田さん: SGLT2阻害薬の中には糖尿病以外に慢性心不全や慢性腎臓病に対しても効果が得られるものがあります。また、近年SGLT2阻害薬がダイエット薬として販売されているため、肥満症にも効果があると思われがちですが、SGLT2阻害薬は肥満症に対しての適応はありません。 編集部: SGLT2阻害薬が適応となる人はどのような人ですか? 志田さん: 現在、SGLT2阻害薬が適応となるのは、「2型糖尿病」「1型糖尿病」「慢性心不全」「慢性腎臓病」の人だけです。2024年4月現在、日本国内で販売されているSGLT2阻害薬は、「フォシーガ」「カナグル」「ジャディアンス」「スーグラ」「ルセフィ」「デベルザ」の6製品です。この6製品に共通する適応症は2型糖尿病で、4つ全ての疾患で承認されているのはフォシーガのみです。 編集部: SGLT2阻害薬が使用できない人についても教えてください。 志田さん: 治療効果が出るまでに数週間程度必要になるため、即座に血糖コントロールが必要な糖尿病性ケトアシドーシスや糖尿病性昏睡(こんすい)になっている人は使用できません。また、容体が急変する可能性がある重症感染症の人や手術などの緊急対応が必要になりそうな人は、急な体調の変化に合わせて厳格な血糖コントロールが必要なため、使用できません。これらの人はインスリン製剤を使用します。
SGLT2阻害薬の副作用と使用上の注意点とは
編集部: SGLT2阻害薬の副作用にはどんなものがありますか? 志田さん: SGLT2阻害薬のよくある副作用としては、カンジダ症や膀胱炎などの性器・尿路感染症を始め、頻尿、脱水、正常血糖ケトアシドーシスの4つがあります。性器・尿路感染症は雑菌が尿のグルコースをエサにして、たくさん増えてしまうことによるもので、排尿痛や尿の色の濁り、性器とその周辺の痒みが出ます。また、頻尿や脱水はグルコースを排泄するため、尿の量が増えたことによるもので、「トイレの回数が多い」「のどや口が渇く」「疲労感」「めまいやふらつき」などの症状が出ます。正常血糖ケトアシドーシスは、身体が高血糖の状態だと勘違いしてしまうことで、高血糖になった時に起きてしまうケトアシドーシスが正常な血糖値でも起きてしまうものです。口の渇きや尿量の増加、体重の減少、だるさなどの症状がでます。 編集部: 男性と女性で注意すべき点は異なりますか? 志田さん: 注意すべき点は男性も女性も基本的には同じですが、女性は尿道が短く、一般的に男性よりも膀胱炎を発症しやすいといわれているため、症状が出ていないかのセルフチェックはもちろん、予防もしっかりしましょう。性器・尿路感染症においても、女性での報告は多いものの、男性の報告もあるため注意が必要です。尿が排泄されることによって膀胱や尿道で増えた雑菌を洗い流せるので、薬を飲み始める前より1日500ml程度多めに水分をとり、できるだけこまめにトイレに行くことが大切です。 編集部: 副作用を放置するリスクについて教えてください。 志田さん: 膀胱炎は治療しないで放っておくと、膀胱で増えた雑菌が膀胱と腎臓をつないでいる尿管を通って腎臓に入ってしまいます。そうなると急性腎盂腎炎(じんうじんえん)になり、入院が必要になる場合もあります。セルフチェックでおかしいなと思ったら早めに受診することをお勧めします。 編集部: その他、SGLT2阻害薬を使用する際の注意点は何かありますか? 志田さん: 薬と身体との相性には大きな個人差があるので、無理をして薬の服用を続けようとしないことです。また、自己判断で薬を使用することは控えて、医師の診断のもとで、適応内で薬を使用することをお勧めします。さらに、薬の副作用で日常生活に大きなストレスを感じる場合や、いつもと違うと感じたときは遠慮なく薬剤師や医師に相談してください。