【静岡県知事選】ともに“オール静岡”を標榜したのに…実際は激しい地域間対立 開票結果にも如実に
川勝平太 前知事の辞職に伴う静岡県知事選挙は投開票の結果、立憲民主党と国民民主党が推薦する鈴木康友 氏が初当選を果たした。自民党にとっては4月の衆院補選とあわせて4連敗となったが、市町ごとの得票に目を向けると敗因は裏金事件などをめぐる逆風だけでないことが見えてくる。 新たな静岡県知事は鈴木康友 氏に…幸福度日本一を掲げ激闘制す 経歴や人柄は? 川勝平太 前知事の辞職に伴う選挙
大村氏が終盤猛追…それでも
5月26日に投開票が行われた静岡県知事選は当初から前浜松市長の鈴木康友 氏(立憲民主党・国民民主党推薦)と元総務官僚の大村慎一 氏(自民党推薦)による事実上の一騎打ちと目されていた。 鈴木氏は県下最大の政令指定都市で16年間トップを務めたことから立候補を表明した時点で知名度抜群。これに対し、“無名”の大村氏は自民党の組織力を借りながら着実に浸透を図り、終盤にかけては鈴木氏を猛追した。 ただ、結果は鈴木氏の得票が72万8500票、大村氏が65万1013票と得票率にして5.1%の差。鈴木氏の背中を近くに捉えながらも、追いつき追い越すことは出来なかった。 自民党にとっては、これで4月の衆院補選から大型選挙4連敗。
中部・東部では自民党が本領発揮
しかし、これをもって裏金事件に端を発する自民党への不信感が敗因と結論付けるのは早計だろう。それが市町ごとの得票に現れている。 当選した鈴木氏が最多得票を獲得したのは35ある市町のうち、わずかに8。一方で、大村氏は27市町を制した。 そして、それぞれが勝利した市町にはハッキリとした特徴がある。鈴木氏が県西部の全市町、大村氏は県中部・東部の全市町という点だ。 確かに県庁所在地で県内2番目の人口規模を誇る静岡市は大村氏が高校時代までを過ごした地であり、同級生も多いことから、大村氏に利することは明らかだった。 とはいえ、同じ中部地域でも静岡市以外に馴染みがあるわけではなく、いくら副知事を務めたとはいえ2010年~2011年の話。 そもそも、現在の副知事の名前を正確に答えられる県民がどれだけいるだろうか?それが10年以上も前に退任した副知事であればなおさらだ。 それでも、島田市など僅差に迫られる自治体もあったものの、中部地域の全市町で勝ち切った。 また、鈴木氏・大村氏ともに地縁がないことから“草刈り場”と言われた東部地域の20市町でも、鈴木氏の陣営が立憲民主党の泉健太 代表や野田佳彦 元首相、国民民主党の玉木雄一郎 代表など名の知れた議員を次々と投入する中、地道な活動によりすべての自治体でトップ得票。事前の情勢調査などでは劣勢に立たされていた市町があったにも関わらずだ。 これは裏金問題による大逆風が吹く中で大健闘であり、むしろ自民党の“組織の強さ”という地力・底力が発揮された結果と見るべきで、「たら」「れば」を言えばこの問題が無ければもっと得票を伸ばした可能性もある。