「養殖魚」のメリットとは? 東京農業大・市川卓准教授が取り組む「養殖」「増殖」の研究に迫る
◆「サケの増殖」の研究も
続いて、市川准教授は魚介類の養殖やある程度まで育てて放流する“増殖”の研究もおこなっているということで、研究として実際に育てているという「サケ」について話を伺うことに。 「皆さまが召し上がっているサケは、ほぼ100%天然魚なのですが、実は“人が育てて放流した稚魚”が大きくなった魚なんです。つまり、人が(サケの)卵をとって、その卵から孵化(ふか)したサケの赤ちゃんをある程度の大きさまで育てた後、放流して北の冷たい海で大きくなってから、また日本に戻ってきたサケを獲って皆さまが食べている、ということになります」と説明。この方法で育てると、養殖ではなく「増殖」と呼ばれます。 そこで、市川准教授が現在おこなっている取り組みとして、「放流するサケの子どもを海でそだてるとき、エサの量を変えたらどういうふうに成長するのか、最も成長するエサの量はどれぐらいかなど、そういうことを研究しています」と話します。 ちなみに、サケの稚魚を海に浮かべた生け簀で飼育できる期間は約1ヵ月と決まっているため、「その1ヵ月で“どれだけ大きく健康なサケの子どもを育てられるか”ということが重要です。また“どれだけ経費を下げられるか”というのも大事な視点です」と力を込めます。 ここまで市川准教授に“養殖”“増殖”の研究について熱い思いを語っていただきましたが、私たち消費者は、魚介類全般に対して「養殖ものよりも天然もののほうがいい」というイメージを抱きがち。 しかし、市川准教授は「例えば、牛や豚、ニワトリなど畜産の分野では、ジビエなどは別として“天然のお肉”ってなかなかないはずです。そう考えたときに、例えば、品質の面では天然魚より養殖もののほうが安定していると思いますし、養殖魚には養殖魚のおいしさ、天然魚には天然魚のおいしさがあると思います」と声を大にします。 ほかにも、悪天候の場合に天然魚だと獲ることが難しいものの、陸地で育てている養殖魚であれば出荷することができるというメリットにも触れつつ、「日本はお魚がとても豊かな国なので、“(その2種を)選ぶ楽しさ”もあると思います」と話していました。 (TOKYO FM「あぐりずむ」2024年7月2日(火)、7月9日(火)放送より)