50歳会社員、先日「老後は5000万円必要」と聞きました。以前は「2000万円」だったと思うのですが本当ですか?「貯金ゼロ」の自分は老後破産してしまうのでしょうか…?
会社員の老後生活の収支は?
実際に厚生年金加入の会社員の老後収支は、どのようになるのでしょう。以下を仮定して試算してみましょう。 ●年収480万円、60歳まで通算40年間働く(共働きの場合、夫婦ともに同条件と仮定) ●夫婦同じ条件の共働き、もしくは妻(夫)が専業主婦(夫)の2パターンを想定 ●世帯支出額は「家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)」の65歳以上の夫婦のみの無職世帯、26万8508円を想定 まず、厚生年金の報酬比例部分は年収480万円で報酬月額40万円となるため40万円×5.481/1000×480ヶ月÷12ヶ月=8万7696円が月額の厚生年金額です。 これに老齢基礎年金部分は40年で満額となりますので、月額6万8000円(2024年度)を加えると、共働き夫婦の年金は1人あたり8万7696円+6万8000円=月額15万5696円となります。 これを「夫婦とも厚生年金」「夫(妻)は厚生年金、妻(夫)は専業主婦(夫)」の2パターンで示したものが図表3になります。
<図表3> 総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)結果の概要などを基に筆者作成 今回のシミュレーションでは、夫(妻)は厚生年金、妻(夫)は専業主婦(夫)の家計において不足額が約1613万円と、「5000万円」とはかなりかけ離れた金額となりました。もちろん介護費用など、ほかに必要な費用もありますが、少なくとも共働き世帯は過度に心配する必要はないのかもしれません。 例えば、現在50歳で貯蓄がない会社員の人であっても、退職金を活用すれば、子どもの教育費が一服した段階などから貯蓄や運用を始めても、老後資金の確保も決して不可能ではないでしょう。
まとめ
今回は老後2000万円問題のおさらいと、今なぜ老後資金が5000万円必要と言われているのかについて解説しました。会社員の人を例に老後資金のシミュレーションもしましたが、今後さらに年金の支給減など老後の生活を取り巻く環境が厳しくなる可能性は十分あり得ます。 特に年金受給額が会社員よりも少ない自営業の人などは、早めの準備が必要です。まずは、自分の年金受給額がどれくらいになるのか把握した上で、早めに老後資金の対策を実践してみてはいかがでしょうか。 出典 総務省統計局 家計調査報告(家計収支編)平成29年(2017年)II 世帯属性別の家計収支 金融庁 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」 総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)結果の概要 公益財団法人生命保険文化センター 2022(令和4)年度 生活保障に関する調査 執筆者:松尾知真 FP2級
ファイナンシャルフィールド編集部