「いかに安く売るか」から脱するために オリジナルに挑むセメント会社が開発した駐輪ブロック
土砂の流入を防ぐL字溝などを開発
当初は小河原さんがアイデアを出し、自身で構造計算も行っていましたが、徐々に新規開発が得意そうなメンバーに声をかけ、構造計算ができる従業員の育成などにも着手。さらには営業から顧客のニーズを聞くなどして、チーム・組織としてまわっていくように体制を整えていきます。 兼務ではあるものの、開発部門も設立。定期的に会議を行うなどして、オリジナル製品の開発を続けます。現在ではオリジナル製品の数は100ほどにまで増え、売上の1割を占めるまでになりました。割合はまだ低いですが、利益率の高い製品のため、会社全体の利益率アップに貢献しています。 たとえば、一般的なU字溝の片側を高くすることで、土砂の流入を防ぐ「土留付L型側溝」です。現場の状況に合わせて土留めの高さを柔軟に調整(設計)できる点が評価されています。 ほかには、古くなったマンホールを、道路を掘り起こすことなく、そのまま中に新たなマンホールを据えることで改修する「ベイセグ」といった製品も開発しました。
公共工事だけでなく民生品にもチャレンジ
公共工事領域だけでなく、一般の人や施設などでも使われる民生品の開発にも乗り出します。 新たな事業軸を拡大したいとの思いはもちろんありましたが、自治体やコンサルタントへ営業していくなか、地場で誰もが知っている知名度やブランド力のある会社であることが、大きなアドバンテージになる、と感じたからです。 そうして生まれたのが、駐輪ブロックです。民生品といえども公共性の高い製品であるため、営業先はこれまでどおり自治体などが中心で、担当課は変わりますが、紹介してもらうことで販路を広げています。 今後は駅などを管轄する鉄道会社などにも営業をかけていく計画ですが、公共性の高い製品は受注や認知までに時間がかかるとの経験から、小河原さんは「ホームページなどを充実させ、世の中に役立つ製品を小河原セメントはこんなにもつくっている。ぜひ、使いたい。そのようにお客さまが思ってもらい、ご連絡いただけるような営業の流れをイメージしています」と話しています。 実際、福島県のある自治体からホームページ経由で問い合わせがあり、納品に至りました。成功のサイクルがますます循環するためにも、さらに世の中の役に立つ、自社製品の開発に注力していきたいと、力強く話す姿が印象的でした。
フリーライター・杉山忠義