「忙しくて本が読めない」を解決するには? 三宅香帆さんが希望を見出した1つの手段
オーディオブック書籍ラインナップ数 No.1の「audiobook.jp」を運営する株式会社オトバンクは、10月21日(月)に「オーディオブック大賞2024」の授賞式イベントを開催しました。本イベントには今年4月に発売され、1週間で累計10万部を突破した大ヒット書籍『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』著者の三宅香帆さんが登壇。オトバンク代表取締役会長の上田渉さんと、「働く」と「読書」をテーマにしたトークセッションが行われました。本稿ではイベントの模様をお伝えします。 【写真】ユーザーが選んだベストオーディオブック受賞者の皆さん
ユーザーが選んだベストオーディオブック
【聴き放題部門】 大賞:『成瀬は天下を取りにいく』宮島未奈(新潮社) https://audiobook.jp/product/269102 準大賞:『もしも徳川家康が総理大臣になったら』眞邊明人(サンマーク出版) https://audiobook.jp/product/262132 【文芸部門】 大賞:『汝、星のごとく』凪良ゆう(講談社) https://audiobook.jp/product/268350 準大賞:『兇人邸の殺人』今村 昌弘(東京創元社) https://audiobook.jp/product/267933 【ビジネス書籍部門】 大賞:『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』ニック・マジューリ、児島修[訳](ダイヤモンド社) https://audiobook.jp/product/268362 準大賞:『とにかく仕組化――人の上に立ち続けるための思考法』安藤広大(ダイヤモンド社) https://audiobook.jp/product/267805
読書離れの原因は、スマホだけではない
【上田】今年9月に文化庁から読書に関するデータが発表されました。1ヶ月に本を全く読まない人が6割を超えていて、1冊ぐらいの人が3割弱なので、0~1冊の人が9割近くになってしまったというデータが出ています。 【三宅】本好きの身からすると読書はメジャーな趣味だと思っていたのですが、このデータを見ると、特に社会人の方には読書はなかなか手が出せないものになってしまっているのだと感じます。この調査は5年に1回行われているのですが、5年前は0冊の方が確か45%ぐらいでしたので、この5年で約20%上がったということになります。 【上田】驚きですよね。私はずっと出版業界の方と接してきたので、皆さん当然本を読んでいらっしゃったこともあり、本を読むのが当たり前だと思っていました。 【三宅】私は大学の専攻が国文学で万葉集を研究していたので、周りには本好きな人しかいませんでした。そこから大学院を出てリクルートという会社に入ったら打って変わって、みんな全然本を読んでいない。そのことに社会に出てから気付かされました。 【上田】1冊も読めない人が多くいるという現状で、『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』が大ヒットしたのは素晴らしいなと思っています。本を読むコツや読書案内は定期的に流行ったりしますが、逆に「読めなくなる」ことについて書いた本でベストセラーになったのは珍しいなと思います。なぜ執筆されたのか教えてください。 【三宅】それこそ国文学の研究をしていた友達も、やっぱりそういう勉強をするぐらいだからすごく本好きな子が多いんです。それなのに、その子たちですら就職すると本を読めなくなったと言ってる子がたくさんいましたし、私自身も働き始めて読めなくなりました。 あるいは元々好きだった古典文学や海外文学のような、自分から遠い分野や文学作品からの距離ができてしまったという感覚を持つこともあり、「働いてると、本読めないよね」という話を友達とすることが多かったんです。 【上田】実際書いてみて反響はいかがでしたか。 【三宅】この本はWeb連載で約1年かけて書いていたのですが、連載のときから反響がすごくて。特にタイトルにただひたすら共感する声が来ていたので、これはパンドラの箱だったのでは...と思ったり。 出版不況の話が出てくると、みんなスマホが好きで、本なんか好きじゃなくなったんだという言い方をすることがありますが、私はそれよりも「本を読みたいけど読めない人」が想定より多くいるぞと思っていたんです。 友達の話を聞いていても、子育てをしていたり仕事がすごく忙しくて出張が多かったりすると、そもそも書店が空いてる時間に書店に行けない。会社が終わったら書店が閉まっているという話をよく聞くんです。