世界農業遺産「茶草場農法」の茶産地に「巨大バッタ」が出現
世界農業遺産の「茶草場(ちゃぐさば)農法」が行われている静岡県掛川市東山地区。山間のこの地域では150年以上もの昔から伝統的に茶草場農法による茶栽培が行われ、一帯には茶畑が広がり、蒸した茶葉の香りが漂っている。その山間の道路脇に巨大なバッタのオブジェが出現した。巨大バッタは何を意味しているのだろうか?
東山地区の茶畑を縫うように走っていると、目前の山の斜面に「茶」と記された大きな文字が見えてくる。さらに少し走ると、今度は道路脇の草むらに巨大な銀色のバッタが姿を見せ、いささかミステリーゾーンに足を踏み入れたような気分に襲われる。 山の斜面に描かれた「茶」文字は、標高532メートルの栗ヶ岳の斜面に作られている縦、横130メートルの文字。地元の人たちが昭和7(1932)年に、手旗信号で位置を確認しながら、1本1本松の木を植えて作ったものだという。しかし、その後、マツクイムシの被害にあい、改めてヒノキで作りかえて今日に至っている。地域のシンボルとなっていて、茶文字を眺めるビューポイントも3カ所設けられている。
巨大バッタは、そのビューポイントの1つに出現した。全長5メートルもある銀色のオブジェ。茶文字が描かれた栗ヶ岳を背に、今にも動き出しそうだ。この巨大バッタ、実はステンレス彫刻家、中嶋大道氏が制作したアート作品で、「トノサマバッタ」というタイトルがついている。掛川市は今秋、初めての取り組みとなる茶文化とアートを融合させた芸術祭「かけがわ茶エンナーレ」を開催する準備を進めており、「トノサマバッタ」は、そのプレ展示作品として設置されたものだ。 東山地区では、茶畑の周囲に茶草場と呼ぶ草地を設けていて、その面積は茶畑180haに対して茶草場130haと広大。茶草場に生えた草を秋から冬にかけて刈り取り、その草を干して裁断したものを茶畑に敷くことで茶畑に滋養を与えて良質の茶葉を育てている。