自分たちの力を把握することで見えてきた「2024年の色」。5発快勝の堀越は難敵・日大豊山に7か月前のリベンジ完遂で東京連覇まであと1勝!:東京B
[11.10 選手権東京都予選Bブロック準決勝 日大豊山高 1-5 堀越高 味の素フィールド西が丘] 【写真】ジダンとフィーゴに“削られる”日本人に再脚光「すげえ構図」「2人がかりで止めようとしてる」 ここまでのシーズンも決して思うような結果は残せてこなかった。周囲からの『全国4強』という視線だって気にならないはずがない。でも、苦しんできた分だけ、自分たちのことは自分たちが一番よくわかっている。7か月前に同じ東京準決勝で敗れた相手とのリターンマッチ。確実に遂げてきた成長の跡を、絶対に見せつけてやる。 「勝ちたいのは僕じゃなくて、彼らじゃなきゃいけないので、彼らの中で勝つ術を、勝つ可能性をどう探るかというのは相当やり込んできています。彼らは自分たちの良いところも見ていますし、ダメなところも知っているので、そこをみんながちゃんと理解し始めてきているのかなと思います」(堀越高・佐藤実監督) 前半の爆発力で勝ち切り、東京連覇に王手!第103回全国高校サッカー選手権東京都予選Bブロック準決勝が10日、味の素フィールド西が丘で行われ、日大豊山高と前年度全国4強の堀越高が激突した一戦は、前半25分までに3ゴールを重ねた堀越が5-1で日大豊山に快勝。関東大会予選準決勝で競り負けたリベンジを達成し、ファイナルへと勝ち上がっている。 スコアは早々に動く。前半6分。右サイドを前進した堀越は、FW三鴨奏太(2年)のスルーパスに抜け出したFW高橋李来(2年)がマイナスに折り返すと、MF小泉翔汰(3年)のシュートはいったんDFにブロックされたものの、こぼれ球を小泉がきっちり押し込む。「『あ、来た!』『ヤバい、外した!』『あ、でもこぼれてきた!』みたいな感じでした」と笑った18番の先制弾。いきなり堀越が先制点を奪う。 疾風怒濤。次の得点は10分。今度は左サイドで小泉が粘って残し、DF瀬下琥太郎(3年)の横パスを受けたMF渡辺隼大(3年)が果敢に放ったミドルは、完璧な軌道を描いて左スミのゴールネットへ突き刺さる。「前半で2点先に獲れたのは本当に大きかったと思います」と口にしたのは堀越のディフェンスリーダーを任されているDF森奏(3年)。2-0。点差が開く。 一気呵成。次の得点は25分。右サイドで少し中に潜った三鴨は左足でスルーパスをグサリ。フリーでディフェンスラインの裏へ飛び出した小泉は「ファーにひねって打とうとはイメージしていました」と右足を振り抜くと、ボールはゴール左スミへと綺麗に飛び込んでいく。「前半で点が獲れたのは凄く良かったです。人が絡みながら、ウチのチームの特徴が良く出ていたなというシーンだったのかなと思います」とは佐藤実監督。堀越が3点のアドバンテージを握って、最初の40分間は終了した。 「ちょっと雰囲気に飲まれたというか、もっとアグレッシブに前に行ってほしかったんですけど、少し消極的なプレーが多くなってしまったところで、一気に相手に行かれてしまいましたね」と海老根航監督も言及した日大豊山は小さくないビハインドを追い掛ける展開に。ただ、後半に入るとキャプテンのFW葛西由晏(3年)とFW大山泰生(3年)の2トップにボールを集めながら、右のFW高岡佑吏(3年)、左のFW作道海斗(3年)の両サイドハーフも徐々に果敢なトライを繰り出し始める。 すると、ピンクのスタンドが揺れたのは後半17分。投入されたばかりのMF山田朝陽(3年)が左サイドからロングスローを投げ入れると、エリア内のルーズボールにいち早く反応した葛西の左足シュートがゴールネットへ到達する。「3点差が付いて、『今日はもうこれで堀越さんのゲームかな』というような雰囲気の中で、会場も『お、まだ豊山行けるのかな』という空気にはできたと思います」と海老根監督。3-1。日大豊山が意地の1点を取り返す。 「もう1点獲りに行かないと相手は加勢してどんどん来るので、『ここはもう1点みんなで獲りに行くよ』という意識でした」(森奏)。まだ2点のリードを抱えていた堀越は、慌てない。後半に入ってスタメンのDF森章博(3年)からバトンを引き継いだキャプテンのDF竹内利樹人(3年)、森奏、DF渡辺冴空(3年)、瀬下と、昨年度の高校選手権で国立を経験した選手がそのまま残った4バックを中心に、日大豊山の攻撃を着実にかわしていく。 試合を決めに掛かる前回王者。32分。三鴨のパスを受けたMF杉村充樹(2年)のグラウンダークロスに、後半から投入されたFW千葉慎之助(2年)がきっちり合わせて4点目。37分。竹内の正確なサイドチェンジを起点に、小泉は左サイドをえぐり切って「左足のクロスは得意なので、ディフェンダーとキーパーの間に流すイメージで」完璧なクロス。ここも飛び込んだ千葉がゴールを陥れて5点目。2年生ストライカーはこれでドッピエッタ。またもや点差が開く。 ファイナルスコアは5-1。「春の関東予選の時は内容的にもずっとこっちが押していたので、それで負けたのがメチャクチャ悔しくて、練習から決定力のところも追及しましたし、1回もチャンスを作らせないという守備のところも意識してきたので、そういう部分を春から修正してきたことが、こういう結果に繋がったのかなと思います」と森奏も話したように、攻守にクオリティを発揮した堀越が日大豊山に7か月越しのリベンジを果たし、2年連続で決勝へと勝ち進む結果となった。 今季の日大豊山は間違いなく強かった。春先の関東大会予選で決勝まで駆け上がり、初の関東大会出場。インターハイ予選でも準決勝で帝京高に惜敗し、全国にはあと一歩届かなかったものの、東京の高校サッカー界で大きな存在感を打ち出していく。 「もともと戦える子やサッカーに対してひたむきな子が3年生に多い代だったので、楽しみにしていた部分はあったんですけど、本当にこっちの想像を超えるぐらい成長してくれました」とは海老根監督。今大会でも東海大菅生高、成立学園高と全国出場経験校を相次いで撃破しての堂々のセミファイナル進出は、大いに誇っていい成果だ。 同校は決勝まで勝ち上がった4年前にも西が丘を経験しているが、当時はコロナ禍で応援制限もあり、この日のような雰囲気の中で戦うことは叶わなかった。「たくさんのお客さんが入って、いろいろなところからの声援があって、『これぞ高校サッカー』という雰囲気でできた西が丘の経験はチームとして初めてでしたし、ここに連れてきてくれた3年生には本当に感謝しています。ここに来るまでにもいろいろな先輩やOBが築いてくれた伝統があって、それをさらにもうワンランク、ツーランク上に引き上げてくれた代だったんじゃないかなと思います」(海老根監督)。日大豊山の勇敢な1年間に拍手を送りたい。 今シーズンの堀越は昨年度の『全国4強』を受けてスタートしている。関東大会予選は準決勝で日大豊山に屈し、インターハイ予選も二次トーナメントの2回戦で敗退。結果という意味で望んだものは得られなかったが、チームは少しずつ、少しずつ、『2024年の色』を纏い始めていく。 「春先から比べたら成長していると思います。春先は去年のあの感じをみんな知っていますし、まだインパクトも残っていて、プレッシャーとの戦いだったんですけど、今はだいぶ薄れてきているので、『もうオマエたちは気にする必要はまったくないし、やれることをしっかりやろう』ということでここまで来ました」(佐藤監督) 今大会も2回戦の日大三高戦は後半終了間際に勝ち越しゴールを奪われ、ほとんど敗色濃厚の状態からラストプレーで追い付くと、延長戦を執念で制してみせる。「監督は『あの3分間を忘れるな』とずっと言ってくれていて、もうあの試合で1回選手権は終わったものだと思っているので、何も失うものはないですし。割り切って今日の試合に臨めたかなと思います」とは三鴨。いくつものシビアな状況を経験してきたことで、彼らは自分たちの力を過不足なく把握し、勝つために必要なことを自分たちで選び取り、遂行してきた。 ようやく見えてきた東京の頂。この日、約5か月ぶりに公式戦へ帰ってきた不動のキャプテン、竹内の決意が力強く響く。「もう去年の準決勝に負けた時に、『絶対国立に戻ってくる』という気持ちでこの1年間はずっとやってきましたし、それを日々のミーティングでも会話に入れてやってきたので、その集大成という意味でも、全国にもう1回戻れるように、全員で一致団結してやっていきたいと思います」。 みんなで積み上げてきた経験値は、すべて今を戦うための糧になる。その先が国立競技場へと続いていると信じ、再び進み始めた“千里の道”もいよいよラストスパート。全国の舞台へと返り咲くため、2024年の堀越に必要な勝利は、あと1つ。 (取材・文 土屋雅史)