二階氏「体調不良」で後継選びが急展開 二階家兄弟の争いで世耕氏「漁夫の利」も
■和歌山新1区も候補見直し 一方、和歌山の新1区でも急な動きが出ている。この選挙区では、参院議員の鶴保庸介元結縄北方担当相が、参院からくら替えして立候補することがいったん決まっていた。だが、県内の自民党の参院議員が不在となることから、県議の一部がくら替えの見送りを要請し、鶴保氏も応じるという。 21日の県連役員会に出席した地方議員は、こう話す。 「鶴保氏は二階先生がいるから、大臣まで出世できたと地元ではみられている。通常なら県連会長も務める二階先生がいない場で、鶴保氏のくら替えについて論議されることはないが、そういう気配がなかった。二階先生の後を見据えた動きが加速しています」 永田町でも二階氏の不在であたふたとした動きがある。 「旧二階派のメンバーは、みんなバラバラに好き勝手なことをやっている。同じく解散となった旧安倍派の一部と、新しいグループを立ち上げようと密談をしている議員もいますよ。二階氏が元気なら、そんなことがバレると一喝されてえらいことになっていたはずですが、影響力が一気に落ちた」(前出・旧二階派の国会議員) ■小池知事には誤算では… 二階氏不在の影響は、進行中の衆院補選にまで及びそうだという。 衆院補選東京15区で、自民党は候補者を出せず「不戦敗」が決定。東京都の小池百合子知事が特別顧問を務める「都民ファーストの会」が「五体不満足」で有名な作家、乙武洋匡(ひろただ)氏を選挙直前に擁立した。 4月20、21日に行われた報道各社の情勢調査では、東京15区ではいずれも立憲民主党の元江東区議・酒井菜摘(なつみ)氏がトップを走り、乙武氏は維新の金澤結衣(ゆい)氏、日本保守党の飯山陽(あかり)氏、無所属で元参院議員の須藤元気氏と、2番手、3番手争いと伸び悩んでいると伝えた。
小池氏と二階氏の「蜜月」ぶりはよく知られている。小池氏が再選を目指した2020年の都知事選の前には、党幹事長だった二階氏が独断で「小池知事が出馬すれば、全面協力は当たり前」と明言した。昨年4月の衆院補選では、二階氏の求めに応じて小池知事は和歌山1区まで応援に出向いた。 今回、自民党は乙武氏を推薦しなかったが、 「二階先生は『小池知事には去年の借りを返さないと』と漏らしていた。二階先生は公明党やさまざまな業界団体などとも太いパイプを持っているので、小池知事も期待していたはず」 と二階派の国会議員は心配そうに話す。 自民党政務調査会の調査役を長年務めた政治評論家の田村重信氏はこう話す。 「大物の二階氏が体調不良で動けないというのは政局に大きく影響します。国政への野望を持っていた小池知事も二階氏の体調不良と影響力の低下は大きな誤算でしょう。反対に、人気抜群の小池知事の失速に、岸田文雄首相はほっと胸をなでおろしているはずです」 (AERA dot.編集部・今西憲之)
今西憲之