被団協ノーベル平和賞、被爆者「苦しみや平和への思いを背負い授賞式の場に立っている姿を見ると感慨深い」
今年のノーベル平和賞授賞式が10日、ノルウェーの首都オスロで開かれた。被爆者団体の全国組織「日本原水爆被害者団体協議会(被団協)」が受賞した。長崎で被爆した被団協代表委員の田中熙巳さん(92)が記念講演し、「核兵器は一発たりとも持ってはいけない」と強調し、核廃絶に向けた取り組みを国際社会に訴えかけた。 【写真】田中煕巳さんの講演を聴き、拍手を送る関係者ら(10日午後9時57分、長崎市役所で)=田中勝美撮影
被爆地の長崎と広島では10日夜、被爆者らが授賞式のインターネット中継を見守り、受賞をともに祝った。
長崎市役所には被爆者ら約160人が集まった。あいさつに立った鈴木史朗市長は被爆2世。「私たちが被爆者の方々の思いを引き継ぎ、核兵器のない世界の実現に向けた大きなうねりを作っていかなければならない」と述べ、「今日のこの歴史的な瞬間をそのスタートラインにしたい」と力を込めた。
授賞式には被団協代表委員で、構成団体の長崎原爆被災者協議会(被災協)会長の田中重光さん(84)も登壇した。
6歳の時に被爆し、長年、平和活動に取り組んできた被災協理事の城台美弥子さん(85)(長崎市)は「被爆者の苦しみや平和への思いを背負って授賞式の場に立っている田中さんたちの姿を見るととても感慨深い。まだまだ原爆のことを世界に伝えるため、頑張らなければと改めて感じた」と話した。
広島平和記念資料館(広島市中区)でも、広島市主催の祝賀式典が開かれ、約300人が大型プロジェクターの画面を眺めていた。
15歳の時に爆心地から約2キロの広島市街地で被爆した切明千枝子さん(95)(広島市安佐南区)は「95年間生きているうちに何度戦争があったことか」としみじみと振り返り、「受賞は栄誉なことだけれど、喜んでばかりはいられない。平和を必死につかんで、離さないように守っていかなければ」と語った。