意外と知らない、民主党時代に硫黄島の遺骨収集が大きく進んだという事実
なぜ日本兵1万人が消えたままなのか、硫黄島で何が起きていたのか。 民間人の上陸が原則禁止された硫黄島に4度上陸し、日米の機密文書も徹底調査したノンフィクション『硫黄島上陸 友軍ハ地下ニ在リ』が12刷ベストセラーとなっている。 【写真】日本兵1万人が行方不明、「硫黄島の驚きの光景…」 ふだん本を読まない人にも届き、「イッキ読みした」「熱意に胸打たれた」「泣いた」という読者の声も多く寄せられている。
遺骨収集の飛躍的成果のキーマンとの邂逅
今後の遺骨収集を考える上で欠くことのできない二人目の人物。それは、阿久津幸彦氏だった。硫黄島の遺骨収集で突出した成果を挙げた菅直人政権の首相補佐官だ。阿久津氏の事務所に取材依頼のメールを送った。 「1952年度に始まり、70年の節目を迎えた硫黄島戦没者の遺骨収集史において、飛躍的成果を挙げたのは民主党政権下の3年間です。しかし、こうした実績を振り返る報道は近年ほとんどされていないのが現状です。つきましては、飛躍的成果を生んだ功労者のお一人である阿久津様にインタビューに応じて頂き、以下の点などについてお話し頂ければ、と希望しております」 「以下の点」として挙げたのは、3項目だった。 ・なぜこれだけの成果を生めたのか。 ・なぜ、それまで年数回だった収集団派遣を通年派遣に切り替えることができたのか。 ・なぜ自民党政権下では再び、低調な遺骨収集に戻ってしまったのか。 僕は日々、戦争や遺骨収集関連のニュースを目を皿にしてチェックしているが、阿久津氏がインタビューに応じたという記事は近年読んだことがない。僕は祈るような気持ちで返信を待った。そして届いた。 〈ぜひ、お受けしたいと思います。質問の内容につきましても、私が聞いてほしいことばかりです。私が『硫黄島からの遺骨帰還のための特命チームリーダー』として、活動していた当時から、すでに10年以上の年月が流れた今、随分と真実が歪められて伝えられ、また、忘れられて残念な気持ちでした。酒井さんには、できる限りの真実を正直にお伝えしますので、ぜひ、『真実の発信』をジャーナリストとして、お願いできればと考えています〉 阿久津氏は、僕が一日一善ならぬ「一日一硫黄島」と称して日々発信しているツイッターを読んでくれていたようだった。そのことが「吉報」につながった。「一日一硫黄島」を地道に続けていて良かった、と心底思った。