日本人の「カキ離れ」が進行中…それでも広島の48歳起業家が「カキ養殖は成長産業」と断言するワケ
■「1~2人いればほとんどの仕事ができる」 外観に加えてオフィス内もおしゃれだ。養殖場直営のオイスターバーとしても機能するようにデザインされているからだろう。 ほかには誰も見当たらない。鈴木は「社員は漁場へ行っています。ここでは1~2人いれば、ほとんどの仕事ができちゃうので」と言いながら、カウンターの中に入った。われわれ取材班のためにアイスコーヒーを用意するために。 正社員は社長も含めて30~40代の5人で、多くは広島市内のオフィス「上幟(かみのぼり)ベース」に常駐している。忙しい時期には、同じ大崎上島にある広島商船高専の学生もアルバイトとして戦力になる。 職場環境はカッコいいうえに若々しい。3Kや衰退産業といったイメージとは正反対だ。 それもそのはず、ファームスズキはカキ養殖で技術的なイノベーションを起こし、世界で勝負しようとしているスタートアップなのだ。 ■水産業が目指す「新3K」のお手本 ファームスズキは「新3K」のお手本だ。新3Kは「カッコいい・稼げる・革新的」を意味しており、若者が水産業に憧れるような環境づくりを目指すムーブメントのことだ。 ムーブメントの牽引役は「フィッシャーマン・ジャパン」。東日本大震災をきっかけに誕生した一般社団法人で、東北を拠点にして新しい水産業の在り方を提案している。発起人の長谷川琢也はこう語る。 「大震災で三陸地方の水産業は大打撃を受けました。水産業を成長産業へ脱皮させるためには若者の力が欠かせず、若者を呼び込むためには新3Kが欠かせない──こう思いました」 鈴木も「カキ養殖は成長産業」と断じてはばからない。海外の養殖現場を飛び回り、彼我の差を目の当たりにしてきたからだ。 2008年に脱サラしてケーエス商会を設立。当初からグローバル展開を視野に入れていたため、伝統ある「ボストン・シーフード・ショー」をはじめ世界各地の水産見本市に積極的に出展してネットワークを広げていった。