「弱者優先」を振りかざしても事故ったら自分が痛い! 身を守るために知っておくべき大型トレーラーや大型トラックの動き
サイドミラーによる安全確認ができないこともある
世の中にはさまざまな種類の自動車が存在する。なかでも特徴的なのはトレーラーや大型トラック。特別な運転技術が要求される車両であるために、当然のごとく誰にでも運転できるというシロモノではない。そんなトレーラーや大型トラックを手足のように扱うドライバーたちは、文字どおりハンドル職人であるといえるだろう。 【画像】重量5トンの巨大トラクターヘッドがサーキットでレースする「トラックレーシング」の迫力バトルシーン トレーラーとは、エンジンや運転席などが装備されたトラクタ(ヘッド)と、牽引されるトレーラー(台車)のふたつが連結されたトラックのことを指す言葉。本来であればトラクタがトレーラーを牽引した状態を「牽引自動車」と呼ぶのが正しいのだが、トレーラーと呼ぶのが一般的になっている。 対する大型トラックとは、読んで字のごとく国内最大級の大きさをもつトラックのことを指す言葉。トータルの全長ではトレーラーのほうが長いというのが一般的だが、(トレーラーではない)単車では全長12mが日本国内では最大のサイズとなっている。 そんなトレーラーや大型トラックには、とにかく死角が多い。また、特殊な動きをするために、周囲の乗用車や自転車、そして歩行者にも注意が必要。事故が起きた場合はトレーラーや大型トラックに原因があるかもしれないが、そんな巨体に巻き込まれたりしたらたまったものではない。最悪の場合は命を落としてしまう結果にもなりかねないため、我が身を守るという意味でも、トレーラーや大型トラックの特性を理解しておいて損はないだろう。 まずトレーラーは、サイドミラーによる安全確認ができなくなるシーンが発生する。車体が「く」の字に折れた状態では、サイドミラーや目視で後方の確認ができなくなるのだ。そのため、トレーラーが曲がってきているときやバックで入庫しようとしているところなどには接近しないのが吉。トレーラーをやり過ごす時間が必要になってしまうが、事故に遭うよりはよっぽどマシだろう。
右左折の際は後方部分がふくらむ
大型トラックにはさまざまな種類が存在するが、ここではもっとも大きな全長12mの箱車を例に考えてみたい。トレーラーと同様に運転席が高い位置に存在するため、下部の確認は思いのほかしづらくなる。発進や右左折の都度にサイドミラーや対策ミラー、アンダーミラーなどで安全確認をするのがドライバーの義務なのだが、自転車や歩行者からすれば注意するほうが無難。ましてや左折体制に入った大型トラックには左側の側面に死角が多くなるため、巻き込まれる危険性が高くなる。動いている大型トラックに無理矢理突っ込むのではなく、やり過ごすことを考えるほうが懸命だろう。 いくら歩行者や弱者優先だからといって、なにをしてもいいというわけではない。たとえ賠償責任は大型トラックに発生したとしても、命を落としてしまうことと比べれば割に合わないだろう。弱者優先はそのとおりだが、その言葉が身の安全を保証してくれるものではないということは、つねに覚えておきたいものである。 そんな大型トラックには、巻き込みのほかにも右左折の際「後方部分が左右にふくらむ」という特性がある。自動車は行きたい方向へとハンドルを回すことで進路を定めることができるのだが、その場合は後輪が軸となる。さきほどの巻き込み事故は、前輪と後輪の間を意味するホイールベースが長くなればなるほど起こりやすいものだが、大型トラックの場合は後輪から車体最後部までの長さ、つまりオーバーハングが長いというのも特徴のひとつ。後輪を軸にして車体が左右に曲がるということは、自ずとオーバーハングも左右に振れてしまう。 そのため、オーバーハングの長い大型トラックが左折をする場合は車体の後部が右側へとふくらみ、右折をする場合には後部が左へと振れてしまうのだ。それは乗用車でも同じ原理だが、その振れ幅が大きく異なってくる。そのため、大型トラックが急旋回するときはオーバーハングが隣の車線や路側帯を塞いでしまうことがあるため、スレスレを走ることは避けたほうがいいだろう。車体の高さから乗用車の運転席にヒットする可能性が高くなるため、安全を確保することが重要。 自転車から大型トラック、そしてトレーラーという多種多様の乗り物が共存する道路を走行する際には、ぜひとも自分の安全を第一に考えた(予測も含めた)行動をとってほしい。いくら運転技術に優れたプロのトラックドライバーであるとはいえ、相手は機械ではなく人間である。 ましてや死角が多い対象であるため、必要以上に注意するぐらいが丁度いいかもしれない。それを面倒くさいとか、まどろっこしいとか思うのではなく、無事に帰宅するためにも意識すべきだ。ルールだからといって相手を信じるのではなく、自分で自分を守るという考えで交通社会を乗り切って欲しいと願うばかりである。
トラック魂編集部