EVシフトの旗手…のイメージで失敗「フォルクスワーゲン」反撃への狼煙
その後、フォルクスワーゲンは環境対策技術の軸足をディーゼルエンジンから電動化に切り替えた。 ディーゼルゲートの不正発覚から、わずか1年後となる2016年9月には、EV(電気自動車)の「I.D.Concept」を発表。 同年11月には、「今後10年間の戦略」として「TRANSFORM 2025+」を発表。「数十億ユーロの投資を行い、e-モビリティの分野でマーケットリーダーになる」「2025年までに年間100万台の電気自動車を販売する」とぶちあげた。
2010年代後半にヨーロッパのモーターショー取材をしていた筆者としては、ほんの数年前まで、「環境対策はディーゼルエンジンだ」と主張していたフォルクスワーゲンが、見事なまでの君子豹変を見せたことに驚いたものだ。 ちなみに君子豹変という言葉は、悪口のように使われることも多いが、本来は「君子のように優れた人は、過ちを改め、速やかに方針を変える」という意味である。 こうしたフォルクスワーゲンの方針変更は、世界中に大きな影響を与え、2020年代前半からの「EVシフト」という大きな潮流を生み出した。その結果、「EVムーブメントの旗手がフォルクスワーゲンである」というイメージが決定づけられたのだ。
■電動化の旗手でありながら主力は… 電動化に大きく舵を切ったフォルクスワーゲンではあったが、実際のところ売り物となるEVの市場導入には時間がかかる。ヨーロッパ市場でEVの「ID.3」が発売されたのは2020年になってのことだった。 また、ID.3はヨーロッパ市場向けであったため、日本への導入はグローバルモデルとなる「ID.4」を待つこととなった。その発売は2022年である。 つまり、ディーゼルゲート不正発覚の2015年から7年もかかっていることになる。また、2022年にID.4が発売されたとはいえ、日本におけるEV販売比率は、フォルクスワーゲン車全体の5%程度であったという。