介護は「施設」と「入居者家族」の『共同作業』!…より適切な”ケア”をしてもらうために「重視すべきこと」
2015年に厚生労働省が出した統計によれば、日本人が亡くなった場所は病院、自宅の次に、「介護施設」が多くなっている。治療に特化した病院でもなく、住み慣れた自宅でもない「介護施設」で亡くなるとはどういうことなのか。 【漫画】くも膜下出血で倒れた夫を介護しながら高齢義母と同居する50代女性のリアル 介護アドバイザーとして活躍し、介護施設で看・介護部長も務めた筆者が、終末期の入居者や家族の実例を交えながら介護施設の舞台裏を語る『生活支援の場のターミナルケア 介護施設で死ぬということ』(髙口光子著)より、介護施設の実態に迫っていこう。 『生活支援の場のターミナルケア 介護施設で死ぬということ』連載第35回 『「優秀なケアマネージャー」は“ココ”が違う!「快適な介護生活」を送るために『ケアプラン』で見るべき場所とは』より続く
介護には「話し合い」が重要
施設での介護はひとりではできないので、自分が考えたこと、疑問に思うこと、悩んでいることなどを言葉にして誰かに伝える必要があります。 「私はこんなふうに介護したいんですけど、あなたはどう思う?」 「私はそれでいいと思うけど、こんなふうにも思っているんだ」 「へえぇ、それってイイね。でも、私たちにできるかなぁ」 「できるかどうか、やってみないとわからないよ」 「よし!一緒にやってみよう。そのあとで、また考えよう」 このように、言う・聞く・伝える・わかち合う・共感する・動機をもつことで介護は展開していきます。ですから、介護施設に話し合いはつきもの。毎日のようにさまざまな会議が行われているのです。
どんな些細なことでも伝える
まず、法律で義務づけられているのが「サービス担当者会議」です。お年寄りの入居時はもちろん、体調の悪化など、そのお年寄りを取り巻く状況に何らかの変化が生じた場合、必要に応じて担当のケアマネジャーが設定します。そのお年寄りのケアを担当する職員が一堂に集まり、できればお年寄り本人・家族も参加して、ケアプランに基づく介護支援の方針を確認し、ケアを実施してからの経過や結果を伝え合います。 必要があれば、介護支援の方針や方法の見直しも、この会議で行います。 サービス担当者会議は、本人・家族が会議というオフィシャルな場で、自分たちの気持ちや要望を直接伝えることができる貴重な機会です。あるおじいさんがいよいよターミナル期にさしかかったときに開かれた会議で、日頃は何も言わない家族が、「おじいさんのひげを剃ってほしい」と要望されました。 その一言から、大切な人をきちんとした身なりで旅立たせたいんだなという気持ちが伝わり、私たちはそれを心がけて見送ることができました。どんなささいなことでもかまわないので、この会議で気持ちを直接ぶつけてほしい。それがよりよい介護につながります。 『『ターミナルケア』に携わる介護職員たちが抱く“不安”と“恐怖”…介護職員自身も“ケア”する『フロア会議』の実態』へ続く
髙口 光子(理学療法士・介護支援専門員・介護福祉士・現:介護アドバイザー/「元気がでる介護研究所」代表)