【朝日杯FS回顧】勝敗を分けたのは順調度 勝ち馬ジャンタルマンタルと素質馬シュトラウスの課題とは
終わってみれば無敗馬
例年、中心になる前走サウジアラビアRC組が不在だったこともあり、パフォーマンス的に抜けた馬がいなかった2歳マイル王決定戦は、案外もつれるのではという予想もあった。力関係が見えにくい状況だと、つい疑ってかかりたくなるのは悪い癖というものだ。 【朝日杯フューチュリティステークス2023 注目馬】完成度やレースセンスの高さが最大の武器! SPAIA編集部の注目馬を紹介(SPAIA) 結果は4頭いた無敗馬のうち、マイル以上の経験がないダノンマッキンリーを除く3頭で決着した。終わってみれば無敗馬。ここまで負け知らずということは、まだウィークポイントを見せていないということでもある。不安がないことは強みであり、力となって結果につながる。ひとつの敗戦で不安を露呈したシュトラウスのレースぶりをみれば、無敗の価値を実感する。2歳戦は順調に歩んだ強みを評価しないといけない。改めて考えさせられた。 勝ったジャンタルマンタルは2戦2勝でGⅡ制覇という戦歴通り、完成度の高さが目立った。枠順を利用し好位のインをとり、スペースを見つけ先に抜け出し、後続を引き離す。最後、差を詰められたのは先にスパートした分であり、当然のこと。突き放せるほど実力は抜けていないものの、センスを感じるレースぶりはマイラーとして素質の高さを示す。このレースぶりならば、簡単には崩れない。2着エコロヴァルツが最後方から追い込んでおり、展開的に強い競馬をしたのは間違いなくジャンタルマンタルだろう。
シュトラウスの課題
ただし、前後半800m46.1-47.7、1.33.8はそこまでハイレベルとはいえない。前後半の差は1.6秒もあり、前で踏ん張ったジャンタルマンタルはハイペースを押し切ったともとれるが、朝日杯FSで前半800m46.1はそう速くもない。サリオスが勝った2019年45.4、グレナディアガーズの20年は45.2と前半45秒台も出現することを考えると、ハイペースというほどでもない。ラップバランスとしては、ドウデュースの21年前後半800m46.2-47.3に近い。今年の後半800m47.7は少し物足りない。前半の割に後半に時計を要したレースではあった。 阪神JF1.32.6(前後半800m46.4-46.2)とは雨による馬場差があったにせよ、やや差があった。キャリア3戦目、センスが光るジャンタルマンタルは、ここから成長し、上積みを見込めるかどうかがポイントになる。この勝利でマイル戦線では文句なしともいえない。記録の上ではもっと強くなってほしい。 前半が速くなった要因はシュトラウスにある。負けたサウジアラビアRC、東京スポーツ杯2歳Sで露呈した気難しさがGⅠで足を引っ張った。無敗馬との違いだろう。大外枠に入った時点でこうなるのではと懸念した通りになってしまった。スタートで後手を踏み、前に壁がない状況で一気にスイッチが入ってしまった。こうなれば、抑え込むより行かせた方がいい。短期免許取得の外国人騎手らしい選択だったといえる。 とはいえ、T.マーカンド騎手に非があるとはいえない。大外枠に入った時点で先行策は定石であり、上の着順を目指すなら無理やり抑え込んで馬とケンカするよりはマシだろう。難しい馬で、ここまで4戦すべて違う騎手が騎乗したのもプラスとはいえない。抑え込める外国人騎手にこだわった采配という意図は理解できるものの、クセの強い馬にテン乗りでは、なかなか手中に収められない。折り合い難の克服が最大の課題なら、騎手を変えずに実戦で教え込むのもひとつの手だろう。 再三指摘してきたが、ブルーメンブラットの仔は素質の高さを認めつつ、気性的に難しいことが多い。これまで産駒のなかで、未勝利で終わったのは1頭しかおらず、確実に走る仔を送る一方、つねに気性との戦いになる。シュトラウスもその課題を抱えながらも重賞を勝ったわけで、素質は非常に高い。今後は強すぎる前進気勢をどうコントロールするのか。騎手の起用法も含め、見直すときだろう。