アバルトが「エンジン脱却」を宣言 フィアットベースのEV開発に専念 「所有コスト」は安い
ハイブリッドは「妥協的」
アバルトはもうエンジン搭載車を生産せず、EVに注力する。欧州部門責任者がAUTOCARに語った。 【写真】アバルト初の電動クロスオーバー、大柄だがよく走る【アバルト600eを写真で見る】 (16枚) アバルトは昨年、ブランド初の量産EVとして500eを発売し、最近では2台目となる600eを投入した。一方で、ガソリン車の595と695は8月に販売終了となった。 フィアットとアバルトの欧州責任者であるガエターノ・トレル氏は、ますます厳しくなる排ガス規制を理由に、電動化されていないエンジン車の新型投入を否定した。メーカーと消費者の両方にとってコストが高すぎるという。 「180g/kmを排出するエンジン搭載スポーツハッチバックをイタリアで作ると、毎年1000~2000ユーロ(約16万~32万円)の道路税を支払わなければならない。同じように走り、同じレベルの楽しさと同等の性能を持つ電動スポーツハッチバックを顧客に提供できるのに、それは公平と言えるだろうか? すべて同じ価格で? わたしは、電動モデルを提供する方が良いと思う」 フィアットは、ハイブリッド車の500イブリダを2026年より生産開始する予定だが、アバルトからもハイブリッドを投入する計画はあるのだろうか。記者の質問に対し、トレル氏は首を横に振り、パワートレインがあまりにも「妥協的」であると語った。 「我々はアバルトのDNAに忠実でなければならない。新型500に搭載されるエンジンは、本物のアバルトのパワーを引き出すことができないマイクロハイブリッドエンジンだ。したがって、その可能性はないだろう」 また、ライバルブランドのアルピーヌがA390を皮切りに、ルノー車のリバッジではなく独自開発のモデルを揃える計画であるにもかかわらず、アバルトが独自のモデルを生産することはないとした。 「(創業者の)カルロ・アバルトは、ゼロからクルマを作ったことはない。アバルトのDNAは、従来のクルマを、エンジン、ダイナミクス、サウンドを通して性能を拡張し、スポーティで親しみやすいものにすることだ」 「我々はこのDNAに忠実であり続けたいので、当面は独自のアバルト車を発売することはない」 フィアットは2027年までに「ギガ・パンダ」と呼ばれる実用性重視のSUVコンセプトを市販化する予定だが、アバルトもこれをベースにした高性能モデルを開発する可能性がある。 「わたしにとってアバルトは、アバルトのDNAを持っている限り、何がベースでも開発することができる。個人的には、アバルトのクルマがAセグメントやBセグメントのハッチバックだけに制限される必要はないと考えている。SUVが可能なら、やらない理由はないだろう」
ジョナサン・ブライス(執筆) 林汰久也(翻訳)