急速充電規格で日中統一「日本がEVで世界を席巻する」は本当か
急速充電器がますます高額になるのでは?
現状のチャデモ規格においても、高出力(50kW)の急速充電器を設置するためには「キュービクル」と呼ばれる高圧受電設備が必要で、充電器そのものも高額であることが課題とされてきた。まして900kWともなれば、新規格の急速充電器の設置費用やランニングコストはますます高騰してしまうだろう。 この疑問について、前出のチャデモ協議会関係者からは「装置コスト、ランニングコストである電気代ともに高くなります。新規格の急速充電器は、現状のようにコンビニなどあちこちに設置されるものではなく、大出力のニーズがあり、コストに見合う場所に設置されることになると考えています」という回答だった。チャデモ協議会が配布する資料によると、現状50kWの急速充電器の設置費用がおおむね300万円程度であるのに対して、新規格の急速充電器は本体だけで1000万円を超えると想定されている。 ニーズがあってコストに見合う場所として、高速道路のサービスエリアが挙げられる。今はまだEVの普及台数が少ないために、急速充電の待ち時間が社会問題とはなっていないが、今後、本格的に高速道路を走るEVの台数が増えてくれば、現状規格の急速充電器を増設するだけでは追いつかない事態が想定できる。 急速充電がエンジン車の給油のように民間ビジネスとして広がることは考えにくい。例えば、1kWhの電気代が27円、30分で20kWh分の急速充電を行ったとして、原価として必要な電気代は540円。30分間の急速充電器の利用料を1000円上乗せしても、施設設置と維持するコストを考えると、現状のEV普及台数では急速充電そのものをビジネスとして維持していく利益を生み出すのは難しい。急速充電設備は、信号機やガードレールのような交通インフラとして整備されるべきものといえる。高速道路のサービスエリアにEVが溢れかえる未来を想像すると、より短時間で充電できる新規格の開発には一定の意義があるといえる。