高橋ヒロムがFM802とのコラボ試合で実感した課題と可能性「プロレスを外に広げるには積み重ね」
【「ききみみ 音楽ハンター」特別編/FM802×新日本プロレス(3)】新日本プロレス・高橋ヒロム(35)は昨年10月から、FM802平日夕方の番組「EVENING TAP」(月~木後6・00)火曜日6時台の20分枠「ELECOM Escuchame(エスクチャメ)802」のDJを3カ月にわたり担当した。 同局では初とみられる現役スポーツ選手のレギュラーDJ。それだけでも快挙だが、802が大阪・南港で開催する年末最大級のロックフェス「RADIO CRAZY」(以下レディクレ)での試合開催にこぎつけた功績は大きい。本人は「プロレスを愛する方々が802に居てくれたおかげ。自分はほんのスパイスです」と謙遜したが、間違いなく立役者の一人だ。 新日本の選手は同フェスで行われる餅つきに参加してきたが、ヒロムは「いつかここで試合を」と願い、訴えてきた。ついに24年、会場の一角にリングが設置され、3試合のスペシャルマッチが行われた。フェス入場者は誰でも観戦可能。社長兼選手の棚橋弘至、昨年台頭した旬のレスラー辻陽太ら新日本ファンも喜ぶメンバーが迫力の攻防を繰り広げた。 ヒロムは振り返る。「もちろんプロレスファンも来てくれたけど、試合中に感じるんですよ…プロレス知らない人が見てくれてるって。アウェーの空気感というか。みんな音楽を聴きに来てる場所でまさかのプロレス…すごい異質だったと思う。こっちにとってもすごい勝負なんですよ。どれだけ引きつけて最後まで離さず、居続けさせられるか」。 その思いは、フェスに参戦するアーティストも同じだ。複数のステージで同時にライブが行われ、ある意味、観客の争奪戦。どれだけファン以外の人もとどめて熱狂させられるか。ヒロムは「自分もそれを感じられて、対バンさせてもらった感覚になれた」と喜びを語った。 試合後、SNSに「このイベントが新日本プロレスに大事なことをたくさん教えてくれた気がする」と投稿。その心を問うと、「プロレスを知らない人たちがいる空間で試合をする大事さ、大切さ」と答えた。 「プロレスは今、ファンしかいない“プロレス村”で盛り上がってるだけなんですよ…特に新日本プロレスは。もっとフェスやイベントに出て行ったり、誰でも見られる場所でやったりもしないと新規ファンは獲得できない。これだけエンタメで溢れ、SNSの投稿もすぐ埋もれて何の宣伝にもならない時代。今回、面白かったとか全然ルール分からないけどすごかった、っていうプロレス初見の方々の感想をたくさん見たんですよ。目で見て感じてもらうことがこれほど大事なんだと。プロレスを外に広げるには一発大きいものを狙うんじゃなく、積み重ねだなと思った」 レディクレでの大会継続も熱望。「恒例にして、いつか(レディクレ開催中の)3日間とも試合するのもアリだな、と。試合数は3試合がちょうどいい。もっと見たかったな、と思ってもらえたら」と考えは尽きない。 熱い思いとともに、現状を俯瞰(ふかん)し、未来を具体的に構想する。どうやらこの人、「冷静」と「情熱」を併せ持つ絶妙なバランス感覚の持ち主のようだ。 次回はそんな高橋ヒロムの無邪気な音楽愛を掘り下げる。(萩原 可奈)