1950年代のミニバンが現代に復活 ルノー「エスタフェット」全高2.59mの “ハイルーフ” 車発表
ボルボとの合弁で開発、2年以内に市販化
フランスのルノーは9月16日、新型EVのコンセプトモデル「エスタフェット・コンセプト(Estafette Concept)」を公開した。都市部に特化したバンタイプの商用車で、1950年代に登場した同名のミニバンの現代版とされている。 【写真】フランス流「ワーゲンバス」がEVとして復活【ルノー・エスタフェット・コンセプトを写真で見る】 (17枚) ルノー・グループとボルボ・グループが4月に立ち上げた合弁会社フレクシスで開発されており、欧州の運送事業者の業務効率化と電動化を目指し、2026年までに発売予定だ。 名称の由来となったオリジナルのエスタフェットは1959年に発売され、改良を重ねながら1980年代まで生産された前輪駆動のバンだ。排気量845ccのガソリンエンジン(後に排気量を拡大)を搭載し、貨物仕様や旅客仕様などさまざまなボディタイプが登場した。 キャンピングカーや移動販売車としても人気が高く、同時代のフォルクスワーゲン・タイプ2(ワーゲンバス)のライバルと言える。 新型のエスタフェット・コンセプトは、オリジナル車から受け継いだ円形ヘッドライトと柔らかな曲線基調のデザインを採用。グレーとイエローのカラーリングと相まって、都市を明るくするとのことだ。 全長4.87mと大型だが、最小回転半径は小型車並みで、狭い街中でも小回りがきくとされている。全高2.59mと高さも際立っており、これはドライバーがしゃがむことなく車内を歩けるようにするためだ。 ルノー・グループのルカ・デ・メオ最高経営責任者(CEO)は4月、新型のバンについて「ドライバーの時間を1秒でも無駄にしないように努めました。配達で30秒節約できれば、物流業者にとって1%の利益向上につながると推定しているからです」と説明していた。 パワートレインについてはEVであること以外に明らかにされていないが、同社初のソフトウェア定義型車両(SDV)と位置づけられる。スマートフォンのように、車載のオペレーティング・システムで広範囲にカスタマイズできるということだ。 例えば、荷室に冷蔵庫を後付けした際も、プログラムを書き換えることでダッシュボードのスクリーン上に冷蔵庫の温度を表示させることができる。 また、ソフトウェア・アップデートにより、航続距離、安全システム、コネクティビティ(車両管理システムなど)を長期的に向上させることも可能だという。事業者にとっては既存のバンよりも30%安く運用できるようになるとされている。 今後2年以内の生産開始を目指しており、市販車も「エスタフェット」と呼ばれることになりそうだ。ルノーは同時に、プレスリリースなどで「ZFlexEVan」という名称も使用しており、詳細は不明だが複数のバリエーションモデルが登場する可能性もある。 デ・メオCEOは4月に設立した新会社フレクシスについて、「ある意味、商用車のテスラです」と語っていた。
チャーリー・マーティン(執筆) 林汰久也(翻訳)