古舘伊知郎氏の胸に残る西田敏行さんの「出し惜しみしない」サービス精神…担当記者の「取材ノート」
別れ際に、人の本質はにじむのかもしれない。17日に急死した俳優の西田敏行さん。訃報翌日の18日、もともと予定されていたフリーアナウンサー・古舘伊知郎氏の「トーキングブルース SINCE1977」(12月5~7日、東京・EXシアター六本木)の取材の席でも西田さんの話題になった。古舘氏は、ある日の西田さんとの帰り道の出来事を教えてくれた。 10数年前、あるパーティーで古舘氏と西田さんが顔を合わせた時のこと。自宅の方向が一緒だったことから、西田さんの車に同乗して帰宅することになった。「僕の方が後輩なので、家の前まで送らせたら悪いと思ったんですよ。なので手前で降りようと『じゃあこの辺りで…』って言ったら、『古舘さんの家、ここじゃないよね。おしっこしたいの? それともバレたくないの?』とちゃんと見抜かれた」 正直に「先輩に送らせるのは申し訳ない」と話すと、西田さんは「分かるよ、俺が後輩だったらそうかもね」と理解を示すと、すかさず語気を強め「こうなったら意地でも送るからね!」とすごんだという。「うまいんですよ。『アウトレイジ』で見た『なんぼのもんや、コラ』って言ってる演技をしてくれる。涙が出るぐらいうれしかった」。西田さんのかわいらしさ、何より優しさが胸に響いた。 自宅の前に送り届けてもらい、礼を伝えると「ドアをなかなか閉めないんです。『あの屋根の、赤いひさしがかわいらしいよね』って、アフターサービスもすごくて。(テレビ番組で一戸建てを紹介している)渡辺篤史じゃないんだから(笑い)。『本当にありがとうございます』って、姿が消えるまでお見送りしました。それを今、スーッと思い出しますね」 最後の1秒まで尽きないサービス精神。「西田さんはあんなすごい俳優なのに、ある意味ふしだらな人。プロ魂を出し惜しみしないんですよね」と古舘氏は語る。だからこそ、急すぎた最期を我々は本当の意味では受け入れられていないのかもしれない。次の作品も待機していたと聞く。西田さんの演技を、まだまだ見ていたかった。(宮路 美穂)
報知新聞社