川中美幸「母の生きざますべてが遺言だった。母の好きだった松竹新喜劇、今の自分やからこそ出してもらえるんやろうな」
2月21日に発売した新曲「人生日和」が有線の演歌歌謡曲リクエストランキングで1位を獲得するなど、力強く歩みを重ねる演歌歌手の川中美幸さん(68)。5月に行われる松竹新喜劇公演にも初出演し、新たな一歩も踏み出します。歌手生活47年。道のりを支えてきたのは2017年に亡くなった母・久子さんの教えだといいます。(取材・文・撮影◎中西正男) 【写真】母の教えを胸に、いつも笑顔!の川中さん * * * * * * * ◆松竹新喜劇さんに出してもらうことに 歳を重ねると、去年できていたことができなくなる。身長も低くなる。そんなことを日々感じます。「しんどいなぁ」となることも増えてきます。(笑) ただ、歌手をやって47年。本当にいろいろなことを経験してきましたし、歳を取ることの意味も感じています。今回、初めて松竹新喜劇さんに出してもらうことになりました。これもね、今の自分やからこそ出してもらえるんやろうなと思います。 昔から松竹新喜劇は大好きで、亡くなった母とずっと見てました。そんなことが影響しているのか、自分のコンサートもね、よく考えたら松竹新喜劇に似た味になっているなと。トークで笑ってもらって、話の内容によっては涙を流してくださる方もいらっしゃる。そして、もちろん歌でも楽しんでいただく。あらゆる感情を揺さぶることが、泣き笑いの松竹新喜劇と共通しているのかもしれない。そんなことを思ってはいたんです。 先日、松竹新喜劇の方とお食事に行かせてもらった時に「いつか出たいんです」と思い切って言ってみたら、言霊というのか、それが実現しました。
◆売れない時期があって本当に良かった 今までね、夢なんて口にするものではないと思っていたんです。静かに自分の中に秘めておくものだと。でも、口に出すことで実現するものもある。それを今回教えてもらいましたし、それと同時に、言霊が成立するのは日々の自分がきちんと暮らしていてこそ。積み重ねをしていてこそ。この歳になって、それも感じました。 47年を振り返ると、歌手として大きかったのはやっぱり最初のヒット曲「ふたり酒」。これで人生が変わりました。世界が変わりました。それまでは売れない時代が続いてましたから。でもね、売れない時期があって本当に良かった。それも今思うことです。 常に「いい気になるなよ」と言ってくる自分がいてくれるんです。「今は商品価値が出てきたから、皆さんがいてくださる。でも、そうじゃない世界なんてまたすぐに来る。その世界を知ってるやろ?」。それを言い続ける自分がいる。だからこそ、なんとかやってこられたんだと思います。 若い時の苦労は買ってでもしろ。そんなことを言いますけど、正直、苦労の中にいる時は「そんなことまでして苦労なんてしたくないわ!」と思ってました(笑)。でも、それがあってこその今だとつくづく感じています。