2500万円が非課税になる【相続時精算課税の超基本】
● 知らないと絶対損する注意点 それは、自動継続と取り消し不可という性質です。具体的に見ていきます。例えば、もともと1億円持っているお父さんがいて、そのうち1000万円を娘さんに生前贈与しました。この時、娘さんが精算課税制度を使うと税務署に申告します。すると非課税枠2500万円が与えられ、1000万円は2500万円以下なので贈与税は一切かかりません。無税で贈与を受けることができます。 ポイントは、次の年です。次の年、お父さんがもう一度娘さんに1000万円の生前贈与しました。相続時精算課税制度は自動継続と取り消し不可という性質があり、2年目に受けた1000万円も2500万円の中に強制的に収容されていきます。そして、将来的にお父さんが亡くなった時、この1000万と2000万、両方2000万が相続財産に合算されて相続税が計算されます。つまり、暦年課税制度に戻ることができません。一度相続時精算課税制度を選択すると、次の年は暦年課税制度に戻せません。 例えば1年目に1000万の贈与を受けて精算課税を使った場合、次の年に年間110万円の贈与をすると、この贈与も自動継続取り消し不可なので110万円が非課税枠の中に入れられ、最終的に全て足し戻ることになります。一度「精算課税制度を使います」と申告すると、次の年に1万円の贈与を受けたときも、贈与税の申告をしなければいけません。非常に少額な贈与でも全て非課税枠2500万円の中に入れていかなければいけないので、どんどん申告をしなければいけません。 ちなみに、2500万円を超える贈与を受けたらどうなるのか、取り扱いも大切なのでおきましょう。例えば、1年目に1000万の贈与を受けて精算課税制度を使います。次の年に2000万円の贈与を受けました。合計で3000万円なので2500万円を超えてしまいます。 この場合、まず使い切れていない1500万円部分は非課税になります。問題は超えてしまった500万円部分です。2500万円を超えた部分には20%の贈与税が発生します。これを払わなければいけません。500万円オーバーしているので、500万円×20%で100万円の贈与税を納めていただく必要があります。 そして、将来的にこの人が亡くなった時、この1000万と2000万、合計3000万が全て相続税の対象になります。そして、この1億円に相続でかかった後に先に払っている贈与税額は贈与税額控除100万円として、1億円で計算した相続税から100万円を減らして、最終的に納める贈与税は将来相続時に精算されるので負担が増えることはありません。ちなみに、先に払っている贈与税の方が大きくて算出された相続税が低い場合、差額は返還されます。還付されますので安心です。 年末年始が近づいてきました。親族で顔を合わせる機会がある人も多いかと思います。相続や贈与のことで家族と話し合う際、ぜひ参考にしてください。 (本原稿は『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】』の一部抜粋・追加編集を行ったものです)
橘慶太