これから生成AIに抹消されることになる職業が「デザイナー」「イラストレーター」「漫画家」「アニメーター」「作家」「脚本家」「作詞家」「作曲家」である理由
販売員は生成AIに代替可能か?
衣料品店やビックカメラのような家電量販店に行くと、商品の説明をしてくれる販売員がいます。そういうお店の販売員は、生成AIの台頭でどうなるのでしょうか? すでに、お店に行かずにアマゾンなどのECサイトで物を買うことが、消費者の間で一般化しています。また、そもそもお店自体の数も減少しているため、それに応じて販売員も減少しています。それとは別に、生成AIに販売員を減らす可能性はあるのでしょうか? 一時期は、ペッパーのようなロボットが販売員を務めるという期待もありました。それがうまくいかなかった理由は、かつてのAIは人とのコミュニケーションがそんなに得意ではなかったからです。 ところが今では、ペッパーにGPTを組み込む試みもなされています。それが実現すれば商品の説明もできて、お客さんの質問にも柔軟に答えられる人型ロボットが実現できるでしょう。そうしたら販売員という職業がすぐ消えてなくなる、という話ではありませんが、徐々に置き換わっていく可能性があります。 ただ、ロボットは物理的な機械であるため、1台1台製造にコストがかかります。ソフトウェアのAIとは違い、限界費用はゼロではないのです。メンテナンスも必要で、動かなくなった場合には修理の人を呼ぶ必要があります。そうであれば、人を雇った方が安上がりということになりかねないでしょう。 販売員に向いているのは、ロボットよりも言語生成AIを組み込んだバーチャルヒューマンだと思います。商品棚にディスプレイが設置してあり、そこに3Dグラフィックスの人が映っていて、商品に関する説明をしてくれるようなイメージです。 ただし、バーチャルヒューマンの場合、お客さんが「スマホケースはどこに売っていますか?」などと尋ねたときに、その場所に連れていくことができません。衣料品店で、倉庫から洋服を持ってきてお客さんに手渡すということもできないでしょう。空間的な移動を必要とするような接客ができないのが難点で、一長一短です。 写真/shutterstock ---------- 井上智洋(いのうえ ともひろ) 経済学者・駒澤大学経済学部准教授 慶應義塾大学環境情報学部卒業。2011年に早稲田大学大学院経済学研究科で博士号を取得。早稲田大学政治経済学部助教、駒澤大学経済学部講師を経て、2017年より駒澤大学経済学部准教授。専門はマクロ経済学。著書に『人工知能と経済の未来』(文春新書)、『ヘリコプターマネー』(日本経済新聞出版)、『純粋機械化経済』(日本経済新聞出版)、『AI時代の新・ベーシックインカム論』(光文社新書)、『MMT』(講談社選書メチエ)、『「現金給付」の経済学』(NHK出版新書)『メタバースと経済の未来』(文春新書)などがある。最近は人工知能が経済に与える影響について論じることが多い。2016年12月には、日経ビジネス「次代を創る100人」に選ばれる。 ----------