マー君、ダルビッシュ..エースの穴はどうやって埋まってきたか?
近年MLBへの人材流出が続くプロ野球界、とくに投手では田中将大(元楽天)やダルビッシュ有(元日本ハム)といった球界を代表する選手が必ずといっていいほどMLBへと移籍していく状況だ。今シーズンも前田健太(元広島)がドジャースへと移籍した。彼らはチームだけでなく日本球界でもトップクラスの選手なので、去られてしまったチームにとって戦力的な穴は極めて大きいものとなる。 表1は近年MLBへ移籍した投手のうち、移籍前年に所属チーム内で最多の投球回数を記録していた投手の一覧である。いずれも移籍時点では日本有数の実力を備えていた投手たちであることには異論がないだろう。では彼らが移籍した後、チームはどうなってしまったのか?ここからはそれぞれのケースを振り返ることで「大エースの抜けた穴」について検証していきたい。
過去最も大きい「穴」となったのは2013年オフにヤンキースに移籍した田中のケースだろう。2013年シーズンの田中は27試合に先発、チームはそのうちの26試合で勝利、先発試合の勝率は.963という空前のものだった。楽天はこの年日本一となったが最大の貢献者であったことは間違いない。この年田中が投げたイニング数は211。翌年この211イニングはどうなったか? 前年に164回2/3を投げていた則本がイニング数をさらに伸ばして199回1/3を記録、エースとしての座は則本に引き継がれた。そして失われたイニング分を埋めることになったのが、2013年はケガのため全休していた塩見と、ルーキーの松井裕だ。この2人は合計で37試合に先発し、イニング数は214回2/3と量の面の穴埋めには大きく貢献、しかし先発試合の勝率.963という「質」の面は埋められるものではなく、この2人の先発試合でのチームの勝率は.471に止まった。結果として2014年の楽天は前年から勝率が.138も下落、順位も最下位に転落してしまった。211イニングという「量」に加え、9割を超える勝率という高すぎる「質」を伴っていた田中の穴は近年最大といえるだろう。