「女性が社会進出すると出生率が下がる」論の解像度の低さ。子育てと女性のキャリアをビッグデータで分析してみると…【少子化対策の真実2】
本連載では、大和総研のマクロ・ミクロの医療保険データ分析から分かった、出生率の変動要因と少子化対策のあるべき姿について3回連載で紹介する。 【全画像をみる】「女性が社会進出すると出生率が下がる」論の解像度の低さ。子育てと女性のキャリアをビッグデータで分析してみると…【少子化対策の真実2】 前回は、結婚した夫婦が持つ子どもの数の減少、すなわち「2人目の壁」が出生率低下に拍車をかけていることを解説した。日本の合計特殊出生率(以下、出生率)を回復させるためには、「結婚した夫婦が持つ子どもの数の回復」が欠かせない。 そのための課題は、女性が正社員などとして働く「被保険者」である場合と、夫などの扶養に入る「被扶養者」である場合で異なる。 連載2回目は、正社員などとして働き、自ら会社の医療保険制度に加入する「被保険者女性」に着目し、「被保険者女性」の結婚と出産の動向を分析していく。 【連載1回目】…少子化「2人目の壁」はなぜ起こる? 医療保険ビッグデータから考える。少子化対策の真実
2008年度頃から正社員などの「被保険者」の出生率は上昇
図表1は、医療保険制度別の被保険者女性の出生率の推計値だ。 健保組合は主に大企業、協会けんぽには主に中小企業に勤める会社員が加入する。国家公務員は国共済、地方公務員は地方共済、私立学校の教職員は私学共済に加入する。 図表1を見ると、制度ごとに出生率の水準に差はあるものの、いずれも2008年度ごろから出生率が上昇トレンドに入ったことが分かる。公務員(国共済・地方共済)は2015年度ごろから出生率の上昇が一服し、以後横ばいになっているが、民間(健保組合・協会けんぽ)と私立共済では2022年度現在まで出生率の上昇が続いているとみられる。 民間の出生率の上昇が続いているのは、女性が働き続けられる環境が整ってきたからだ。 図表2は、民間(健保組合+協会けんぽ)、国共済、地方共済につき、25~39歳女性の就業継続率と出生率推計値の関係をプロットしたものである。民間では、就業継続率が上昇するにつれ、出生率が向上してきたことがわかる。 この間、保育所の増設が進められ、育児休業制度も充実してきた。これらの少子化対策は被保険者の出生率の向上には効果があったと言える。