高校野球「弱小県」の名を返上せよ…夏の甲子園9大会連続初戦敗退の鳥取県が選手強化に本腰、元プロ招き「小さな県でもキラリと光る力を」
夏の甲子園大会9大会連続初戦敗退、70年近く8強入りなし――。高校野球「弱小県」の汚名を返上し、県民を勇気づけようと、鳥取県が選手強化に本腰を入れている。独自予算を計上し、Uターンした元読売巨人軍投手、川口和久さん(65)ら元プロに実技指導を依頼し、県外強豪校の招待試合を開催。甲子園準優勝など成果を上げた他県の先例もあり、再現を狙う。(鳥取支局 藤川泰輝) 【写真】捕手を務める球児を指導する達川さん(鳥取県倉吉市で)
鳥取は戦前の全国大会で4強入り4回を誇り、戦後も1960年春に米子東が準優勝した。夏はこの30年間でわずか3勝と、勝率は0割9分4厘で全国最下位。直近3年は零封負けが続く。
野球人気低下や人材流出を懸念する県高校野球連盟は2022年、県側に対策を相談。前年に古里の鳥取市に戻って就農していた川口さんに指導を仰いだ。
川口さんはアマチュアを指導できる学生野球資格を回復しており、県は翌年、スポーツ特別アドバイザーを委嘱。謝礼や交通費などに充てる年100万円の予算を確保した。川口さんは月1回ペースで県大会上位校への訪問指導を実践中で、制球力の高め方などを伝授された球児たちは「各自に合った的確なアドバイスをくれる。狙った所に強い球を投げられるようになった」と喜んでいる。
川口さんの人脈を生かし、広島東洋カープ時代の元同僚も講師に招いている。先月24日には、バッテリーを組んだ達川光男さん(69)、首位打者2回の内野手の正田耕三さん(62)らが各校合同の講習会に参加。倉吉東高(倉吉市)に集まった県内23校の指導者や選手約100人が、体の使い方や技術論の講義を受け、捕球方法や打撃フォームなどを学んだ。
10月13、14日には、県高野連が、県から一部費用の補助を受けながら鳥取市内で智弁和歌山(和歌山)との招待試合を開催。県秋季大会上位4校が全国レベルの強豪の胸を借りて経験を積んだ。
指導の成果で明るい兆しも見える。招待試合に参加した米子松蔭は、秋の中国大会で準優勝。 惣郷峻吏主将は「智弁和歌山は走塁意識が高く、自分たちも次の塁を狙う意識が高まった」と手応えを語る。