NY州では“前科”を抹消…「大麻合法化」で社会はどう変わるのか 販売ライセンスに税金、罰則について元マトリ部長が徹底解説
“合法化”は“自由化”ではない
いま、NYの中心街であるマンハッタンには“ディスペンサリー”と呼ばれる「大麻販売店」が散見される。何の違和感もなく瀟洒な街並みに溶け込んだ店舗で、大麻が売買されているのだ。我々(IDIF=International Drug Intelligence Forum=国際麻薬情報フォーラム)の調査でも、嗜好用大麻販売店約230軒、医療用大麻販売店約40軒が確認されている(2024年7月現在)。 NY州の合法化制度では、人が摂取する大麻を指す用語として「成人用大麻(Adult-use cannabis)」と「医療用大麻(Medical cannabis)」のふたつが用いられる。また、繊維などを採取する産業用大麻は「ヘンプ(Hemp=麻)」と呼ばれる。「成人用大麻」は他州でいう“嗜好(娯楽)用大麻”に該当し、ヘンプはTHC含有量が0.3%以下の大麻の品種と定められている。ちなみに、THCとは大麻の有効成分・テトラヒドロカンナビノールの略称だ。ここでNY州の合法化を分かりやすく説明するとこうなる。 〈21歳以上の成人は、最大3オンス(約85グラム)の大麻及び最大24グラムの濃縮物を所持することができ、許可された場所でそれを吸煙等することができる。ただし、購入できるのは、身分証明書を有する成人に限られる〉 医療用大麻には年齢制限(18歳以下は保護者の同意が必要)がないものの、行政が発行する大麻使用患者(医療用大麻医師の診断に基づく)の認定書「医療用大麻カード=MEDICAL MARIJUANA CARD」が必要であり、認定されると医療用大麻の使用を支援する介護者を最大5人まで指名できる。 大麻から縁遠い日本人は“合法化”を“自由化”と勘違いしている節がある。だが、“合法化”はその言葉通り、大麻に関する事柄を細かく法律に定め、それに違反すれば当然ながら罰則も伴う。つまり、何でもかんでも野放図に許すわけではないのだ。