行政長官選挙めぐり対立 中国と香港「一国二制度」は今どうなっているの?
8月31日、中国・全人代常務委員会は、現在財界中心の1200人の選挙委員による制限選挙で選ばれている香港の行政長官を、2017年の選挙からは普通選挙で選んでもよいとの決定を行いました。これは一見すると民主化の進展のように見えますが、北京の許す「普通選挙」には条件がついています。中央政府は、現在の選挙委員会を「指名委員会」として存続させ、この委員会で過半数の指名を得た候補者だけが選挙に出馬できるとしています。中国ビジネスを重視する財界の委員が、北京と対立する民主派を指名する可能性はほとんどないため、民主派は立候補の道を事実上閉ざされたことになります。
「一国二制度」の現状
イギリスの植民地であった香港は、1997年の中国への返還後も少なくとも50年間(2047年まで)、「一国二制度」方式により、中国大陸とは異なるイギリス式の資本主義体制が維持されることになっています。 政治の面では、大陸が共産党の一党支配体制であるのに対し、香港では大陸よりも大きな言論・集会・結社などの自由が許されていて、反政府的な民主派政党も存在しています。北京や香港の政府に批判的なメディアもありますし、デモも頻繁に起きます。また、中国政府は返還後の香港の「ミニ憲法」と称される香港基本法に、将来の行政長官選挙を普通選挙で行うという目標を明記しています。これは、イギリスが中国に要求した返還の条件であると同時に、中国共産党の統治を心配する香港市民を安心させるための政策でもありました。 しかし、今回の決定により、1980年代の民主化の開始以来30年以上にわたって民主派が求め続けてきた民主化が、欧米や日本・台湾のような「真の民主主義」ではなく、中国政府の意向を反映する独特の選挙という形で決着させられようとしています。これに対し、民主派の失望は大きく、来年立法会(議会)で具体的な選挙方法案が審議される際、民主派は一致して反対票を投じると主張しています。可決には立法会の3分の2の賛成が必要ですが、民主派は3分の1を少し上回る議席数を保持していますので、全員が反対票を投じれば改革案は否決され、普通選挙は先送りとなります。現在は多くの人が、そうなる可能性が高いと予想しています。