行政長官選挙めぐり対立 中国と香港「一国二制度」は今どうなっているの?
中国と香港民主派それぞれの思惑
民主派が計画しているもう一つの抗議活動は「セントラル占拠」です。香港の金融・政治の中心であるセントラル地区において道路での座り込みを行い、都市機能を麻痺させるという計画ですが、このような行為は香港ではほとんど前例がなく、平和裡に行えるかどうかが懸念されます。
北京が民主派を警戒する最大の理由は「国家の安全」です。中国は1989年の天安門事件以来、民主化は共産党政権の転覆の陰謀であるとの警戒心を強めました。近年の「アラブの春」や、ウクライナなどの政変を前に、中央政府は近年特に、外国が香港の民主を利用し、中国を民主化させようと企てていると強く主張しています。実際、香港の民主派は3月の台湾での立法院占拠運動とも連携していますし、同じ「一国二制度」でありながら、民主派が弱く政治的には親中的で安定しているとされてきたマカオでも、5月には2万人規模のデモが起きました。 北京の「国家の安全」と、民主派の「真の民主主義」は、互いに相容れない要求であり、双方の対立の解決は難しく、今後長期にわたって、香港ではデモや集会等の繰り返される不安定な状況が続く恐れがあります。 (倉田徹/立教大学法学部准教授)